「第三者割当増資」とは、第三者を限定して新しく株を発行して買ってもらうことで資金を集める、資金調達の一つの手法として挙げられます。
第三者割当増資は、税金が発生せずに資金調達ができるというメリットの反面、既存株主の持ち分が希薄化になるデメリットがあります。第三者割当増資で成功するには、きちんとメリット・デメリットを理解した上で、自社に合った手法であるかどうかを判断する必要があります。
そこで今回は、第三者割当増資について知っておくべき知識をまとめました。これから第三者割当増資を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1、第三者割当増資とは?第三者割当増資のシミュレーション
(1)第三者割当増資とは?
第三者割当増資とは、資金調達の一つの手法として、既存の株主であるかどうか関係なく、特定の第三者向けに新しく株式を発行して、その新しい株を購入した資金を資本金に増資します。
増資をすることによって、会社に対する支配権などが変更になる可能性があるため、全く関係のない第三者より、一般的にはその第三者はクライアント、取引先、付き合いがある金融機関、会社の役員など会社の縁故者であることが多く、縁故割当増資とも言います。
(2)中小企業が多く使われている
上場会社が増資する場合、株式を公開していることから、不特定多数の投資家向けに新しい株式を発行して、「公募増資」という形で増資を行います。
一方、中小企業は一般的には非公開会社であるため、株式は非公開にしていますので、「公募増資」ではなく、「第三者割当増資」を多く活用しています。
(3)M&Aの手法でもある
M&Aで第三者割当増資を活用されるケースもあります。
買手会社を第三者と指定し新しい株式を発行して、増資を受ける形になります。なお、買手会社の持ち株が過半数を超えた場合、経営権が買手会社に渡ることになります。
(4)第三者割当増資のシミュレーション
実際に第三者割当増資をした時のシミュレーションをみてみましょう。
①資金調達を目的とした第三者割当増資
■既存株主の持ち株
- 資本金:2,000万円
- 株価:10万円
- 発行済株式数:200株
■新しい株主の持ち株
- 増資資金:1,000万円
- 株価:10万円
- 株式数:100株
■第三者割当増資後の株式構成
- 資本金:3,000万円
- 発行済株式数:300株
- 株主構成:既存株主66.7%、新しい株主33.3%
第三者割当増資後も既存株主に経営権を所有します。
②M&Aを目的とした第三者割当増資
■既存株主の持ち株
- 資本金:2,000万円
- 株価:10万円
- 発行済株式数:200株
■新しい株主の持ち株
- 増資資金:3,000万円
- 株価:10万円
- 株式数:300株
■第三者割当増資後の株式構成
- 資本金:5,000万円
- 発行済株式数:500株
- 株主構成:既存株主33.3%、新しい株主66.7%
第三者割当増資後に、新しい株主の持ち株が2/3を超えましたので、経営権は新しい株主に移る形になります。
2、第三者割当増資による増資のメリットは?
では、第三者割当増資にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
(1)事業の拡大
第三者割当増資は資金調達として非常に有効的な手法であり、第三者割当増資を活用して資金調達することによって、会社の運用資金の基盤を大きくすることができます。
会社に資金力があれば、新しい事業に投資したり、商品開発に投資したりなど、会社の事業を拡大するスピードが加速されます。
(2)資本金増えることにより会社の信頼性アップ
第三者割当増資は結果、資本金の増資になります。会社の資本金が増えることによって、会社の信頼性アップにも繋がります。
(3)税金が発生しない
M&Aを目的に第三者割当増資を利用する場合、会社の資本金が増資されて、会社の経営権を買手会社に渡すことになりますので、既存株式を譲渡するわけではないため、税金は発生しないというメリットがあります。
3、第三者割当増資するデメリットは?
一方、第三者割当増資にデメリットもあります。
具体的には下記4つのデメリットが挙げられます。
(1)第三者割当増資による株式の希薄化
上記「1、第三者割当増資とは?第三者割当増資のシミュレーション」のシミュレーションを見ていただければわかりますが、第三者割当増資をすることによって、既存株主の持ち分の少なくなるというデメリットがあります。
第三者割当増資によって持ち分が少なくなる既存株主を守るため、2009年に上場企業向けに東京証券取引所は「25%ルール」「300%ルール」を設けました。
「25%ルール」「300%ルール」は、第三者割当増資をすることによって、「増資後の株式の議決権数/増資前の発行済株式の議決権総数」が25%もしくは300%を超えないという制限です。
25%を超えた場合、株主総会にて株主の意思確認手続きを行います。一方、300%を超えた場合、株主を守ることが難しいという理由から原則は禁止となっていますが、株主および投資家の利益に侵害するおそれが少ないと認められた場合を除いて、上場廃止のペナルティが課せられます。
(2)第三者割当増資の非上場会社の株価の公正化
非上場会社の場合、株の評価価格は公表されていないことから、新しい株の発行価格は公正なのかどうかの判断が難しいです。
株価の算出は
- 簿価純資産法
- 時価純資産法
- 収益還元法
- DCF法
など複数の算出方法がありますので、公正化にするため公認会計士などの専門家に相談するといいでしょう。当サイトも相談を受け付けますので、相談したい方は記事最後に掲載されている問合せフォームからご連絡ください。
(3)増資後の資本金額によって増税の可能性ある
第三者割当増資することによって、増資後の資本金額によって増税の可能性あります。
税率が変わる資本金額は、「1,000万円以上」と「1億円以上」が基準になっています。
(4)既存株主に売却益が出ない
M&Aを目的に第三者割当増資を行った場合、資本金への増資という形になりますので、既存株主に現金を渡すわけではないため、売却益を得られないというデメリットが挙げられます。
4、第三者割当増資の有利発行とは?
有利発行とは、新しい株式を発行する時に、その株価は通常の株価より10%前後安くして、第三者にとって有利な株価とのことです。
(1)有利発行をするには?
有利発行することによって、既存株主の利益を侵害することになりますので、きちんと株主総会にて特別議決を行うようにしましょう。株主の同意を得ずに勝手に行う場合、株主から差止めを請求されることがありますので、注意する必要があります。
(2)有利発行の税金は?
相場の株価で第三者割当増資行う場合、税金は発生しませんが、有利発行の場合、相場の株価より安く発行していますので、その差額は利益とみなされ課税されます。
- 法人の場合:法人税が課税される
- 個人の場合:所得税が課税される
- 親族の場合:贈与税が課税される
5、実際に第三者割当増資する時の手続きは?
最後に実際に第三者割当増資する時の流れをみてみましょう。
大きく下記の流れになります。
- 新株の募集要項を決める
- 割当相手に募集要項を通知する
- 新株の募集のお申込み
- 取締役会もしくは株主総会にて決める
- 期間内に出資金を振り込む
- 変更登記をする
お問合せフォーム
当サイトではM&Aにて第三者割当増資の無料相談を対応しております。
第三者割当増資で専門家のアドバイスが欲しい方は、下記お問合せフォームよりご連絡ください。
まとめ
今回は第三者割当増資について書きましたが、いかがでしたでしょうか。
きちんと第三者割当増資のメリットとデメリットについて理解した上で、自社の目的に合った活用方法ができますと幸いです。
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