こちらの記事をお読みの方の中で、会社の跡継ぎを考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、
- うまく子どもに会社を跡継ぎするには何を注意すべきか?
- 子どもに会社を引き継いだ時の税金はどうなるの?
- 跡継ぎがいなくて、会社をどうするべきか?
など、会社の跡継ぎで知らないことや悩みを抱えている方も少なくないでしょう。
そこで今回は、会社を子どもに跡継ぎする時の注意点、跡継ぎがいない場合の事業承継の解決方法などについて書いていきます。これから会社の跡継ぎを検討されている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
1、子どもを会社の跡継ぎにしたい時の4つの課題
数十年頑張って会社を育ってきた経営者にとっては、子どもを会社の跡継ぎとして考えている方は多いのではないでしょうか。
しかし、子どもに跡継ぎしてもらうには、下記4つの課題が挙げられます。
(1)子どもは親の事業に興味がない
子どもは親の事業に興味があるとは限らないです。
不動産業界に進んだ子どもに、親が経営しているIT会社を継ぐのはなかなか難しいケースもあります。
この場合、無理して子どもに会社を引き継がせるのではなく、親戚だったり、役員だったり、M&Aを活用して会社を売却することも視野に入れましょう。
(2)子どもには会社を経営する能力がない
子どもには会社を経営するスキルがない場合もあります。
せっかく頑張って育ってきた会社を、経営能力がない子どもに引き継がせるのは、なかなか難しいと言えるでしょう。
この場合も子どもに会社を継がせることを無理せず、外部から優秀な方を招聘するなどの方法を考えましょう。
(3)会社の事業が古い
少子高齢化などの影響で、今の日本において業界の再編がどんどん進んでいます。起業時に流行っていた事業でも、今となれば業界の再編により、この先事業の存続性に危機感を感じる場合もあります。
そんな中で、子どもに会社を引き継がせるのは望ましくないでしょう。
この場合、新しい事業を取り入れたり、会社を買収したりなど、子どもと一緒に会社を立て直すことを検討しましょう。
なお、事業再編の手法について詳しく下記記事を参照にしてみてください。
(4)部下から反発の声が出る
長年会社に勤めていて、みんなにその能力を評価されているのであればいいのですが、自分の子どもという理由でいきなり会社の経営を譲るとなると、部下から反発の声が出る可能性が高いです。
優秀な人材が辞めたりなど、会社の経営が傾くまでの影響が出ることもゼロではありません。
この場合、部下に納得してもらうことが重要なので、しばらく子どもに会社で働いてもらい、タイミングをみて会社を譲ることが大切と言えます。
2、子どもに会社を跡継ぎにした時の税金
子どもに会社を譲るだけではなく、会社を譲ることによって税金が発生します。
会社の引き継ぎ方によって税金の種類が異なり、納税者も異なります。
一般的には、子どもが会社を引き継ぐ時は下記3つの方法があります。
(1)子どもが会社を買収する
こちらの方法は、子どもが親の会社を買収することになります。
この場合、親は「譲渡益☓30%」の法人税が課税され、親が税金を納めることになります。
(2)生前贈与により会社を引き継ぐ
親が生きているうちに会社を子どもに引き継ぐ場合ですが、生前贈与にあたり、子どもに対して「贈与税」が発生します。
①贈与税(暦年課税)の計算方法
贈与税は、暦年課税と言って、会社を引き継いだ年に会社の評価額から非課税枠110万円を差し引いた金額に対して課税されます。
会社の評価額は、会計事務所などで「相続税評価額」を算出してもらうことになります。例えば、6,000万円の評価額が出た場合、「6,000万円−110万円=5,890万円」に対して贈与税を支払うことになります。
■計算方法
5,890万円☓55%−400万円=28,395,000円
生前贈与は3,000万円を超えた場合、なんと55%と非常に高い税率となっているため、現金の準備も必要であること認識しておきましょう。
出典:国税庁「贈与税の計算と税率」
②「相続時精算課税」とは?
相続時精算課税は、簡単に言えば贈与税対策です。
仕組みとしては、贈与金額の2,500万円までは非課税で、それを超えた金額に対して一律20%の税率となります。また、相続を受ける時に、生前贈与の財産と相続時の財産を合計して相続税を算出しますが、その金額から既に支払った贈与税を差し引くことになります。
上記「①贈与税(暦年課税)の計算方法」の例で挙げますと、相続時精算課税を利用した場合、「(6,000万円−2,500万円)☓20%=700万円」と、贈与税が1/4となりました。
なお、相続時精算課税は一時的に税金をおさえることには有効ですが、相続時の財産が多い場合はトータルの税金額が高くなるケースもあるので、事前に税理士などのプロに相談されるといいでしょう。
相続時精算課税について詳しくは国税庁の「相続時精算課税の選択」を参考にしてみて下さい。
(3)相続税
親が亡くなってから会社を引き継ぐ場合もあるでしょう。その場合、相続税が発生します。
相続の場合、全ての財産と合せて相続になりますので、全体の財産に対して相続税が課税されます。また、遺言書に会社の後継者として明記された場合はいいのですが、通常相続で、法定相続人が複数いる場合、株が分散される可能性もあります。
相続で会社を引き継ぐ場合、税理士などの専門家に相談することオススメします。
3、事業承継促進の税制措置
「2、子どもに会社を跡継ぎにした時の税金」にて子どもが会社を引き継ぐ時の税金について書きましたが、国は事業承継促進のため、平成27年度に相続税、贈与税の猶予制度が実施されました。
経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式を相続、または贈与により取得した場合が対象となります。
措置の詳細は下記図をご参照ください。
出典:経営承継円滑化法申請マニュアル「相続税、贈与税の納税猶予制度の特例」(2018年)
事業承継税制について詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
4、跡継ぎがいない場合の3つの選択肢
帝国データバンクの「後継者問題に関する企業の実態調査」のデータによりますと、なんと日本企業の跡継ぎとなる後継者がいない企業は7割近くあるという深刻な状況になっています。
そんな中で、外部招聘、M&Aなど非同族の選択肢が挙げられます。
(1)社員に跡継ぎしてもらう
1つ目の選択肢は、会社の経営幹部に会社の跡継ぎをしてもらうのです。この場合マネジメント・バイアウト(MBO)と言います。
- 株を買収する資金の用意ができない
- 連帯保証と担保ができない
などの課題はありますが、政府や金融機関が出資するPEファンド(プライベート・アクイティ・ファンド)、事業承継ファンドを活用して、雇われ社長にはなりますが、会社を引き継ぐことができます。
社員に跡継ぎしたもらう時のステップなどについて、詳しくは下記記事を参考にしてみて下さい。
(2)M&Aを活用する
2つ目の選択肢は、M&Aを活用して会社を成長させることです。
衆議院調査員経済産業調査室の「最近の企業動向等に関する実態調査」のデータによると、事業承継においてM&Aに対して5割以上の会社は前向きに考えているそうです。
出典:衆議院調査局経済産業調査室「最近の企業動向等に関する実態調査」
また、実際にM&Aを実施した会社の生産性が高いのデータも出ています。
出典:中小企業庁の「中小企業白書・小規模企業白書概要」(2018年版)
M&Aについて詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
(3)会社を廃業させる
3つ目の選択肢は、非常に残念なことではありますが、会社を廃業させることです。
会社を廃業することを簡単に考えている方が多いですが、実は廃業は簡単なことではなく、そのネックは「借入れの返済」です。中には廃業するため自己破産まで追い込まれた方もいます。
借入れがない、問題なく返済ができる会社は、逆に言えばいい会社です。跡継ぎが問題なら、ぜひM&Aを活用してみましょう。
会社を廃業する時の流れや費用などについて詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
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まとめ
今回は会社の跡継ぎについて書きましたが、参考になりましたでしょうか。
昔と比較して、今では子どもに跡継ぎさせるという考え方から、会社のためなら外部でもいいという考え方をされている経営者が増えました。
こちらの記事を参考に、子どもにとって、会社にとって、一番ベストな跡継ぎ方法を見つけられたら幸いです。
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