業種に問わずに対応するM&A仲介会社もあれば、業種を特化してM&Aのサポートさせて頂いてるM&A仲介会社もあります。
今回は会計事務所などの士業事務所に特化してM&Aのサポートをさせて頂いてる、株式会社アックスコンサルティングの主任コンサルタント 前田 浩輝(まえだ ひろき)に、士業事務所ならではのM&Aで成功するときのポイントについて伺わせて頂きました。
目次
1、活発に動いているM&A業界ですが、前田さまはこれからの業界の動きについてどのようにお考えでしょうか?
今後ますます活発になっていくのではないかと思っています。というのも、活発になっていく理由としては中小企業の経営者の年齢等もありますが、M&Aに対するイメージが変わってきていることが大きな要因ではないかと思います。
一昔前ではM&Aというとどうしても「ハゲタカ」「身売り」といったイメージ、誤解が多くありました。しかし、M&Aが一般的に認知され始め、事例も増えてきているためか、その誤解がなくなってきている印象です。特に、中小企業のM&Aは人が主役です。ハゲタカではうまくいきませんし、M&Aは身売りではなく企業を守っていく「戦略」の一つだと考えています。
今後はさらに、M&Aは「企業を守るための戦略」という考え方が広まっていくと思います。実際に、弊社でサポートさせて頂いてる士業事務所のM&Aでも、後継者問題の解決のためだけではなく、将来を見据え業界の変化に対応していくための「戦略」として譲渡と譲受を両軸で考えているというご相談も多くなってきています。
2、御社は会計事務所など士業事務所を特化したM&A仲介をされていますが、かなり特殊な業界だと思いますが、士業業界のM&Aを詳しく教えてもらえますか?
士業事務所は、所長や職員、また顧問先との関係性が深く、歴史のあるご事務所であればあるほど、所長と顧問先とは長いお付き合いで、「あの先生だからお願いをしている」という顧問先の社長が多くいらっしゃいます。職員が担当している場合も同じです。
そのため、その関係性をどううまく引き継ぐのかが一番のポイントになります。そのため、友好的なM&Aでなければ成り立たないのが士業業界のM&Aです。
また、資格がないと事務所を引き継げないというのも特徴です。しかし、年々資格受験者は減少傾向にあり、ほとんどのご事務所で後継者候補となる資格者を採用しようと思っても資格者を採用できていないのが現状です。また、独立が多い業界でもありますので、せっかく優秀な人材を採用、教育できたとしても独立してしまうという難しさもあります。
3、特殊な士業業界だからこそ、M&Aを実施するにあたり様々な決まりごとがあるのではないかと思いますが、業界ならではの注意点などぜひ教えて頂けますでしょうか?
いかにして顧問先とご事務所との関係性を引き継ぐのかが最大のポイントです。
そのためには、「変化を最小限に進めること」です。色々な注意点がありますが、目的は環境の維持です。例えば、業務内容やサービス内容などなるべくそのまま引き継いでもらえるように交渉を進めていきます。もちろん、職員目線においても同様で、給与待遇や雇用環境についても、基本的には変えずに進めることがほとんどです。
また、職員の方への発表のタイミングは注意が必要です。M&Aという言葉だけが独り歩きしてしまうと不安になってしまいます。そのため、ある程度の方向性が決まるまでは水面下で活動することが多く、情報の漏洩については最大の注意を払っております。ただ、発表のタイミングや伝え方さえ間違わなければ、職員の方も安心してくれますし、積極的に協力してもらえることが多いです。
4、M&Aのご実績が豊富な前田さまですが、今まで最も印象に残っている案件は?
最も印象に残っている2つの案件をお話します。
1つ目は、余命宣告を受けた先生からのご相談でした。
そのご事務所には資格者がおらず、自分が抜けてしまうと職員に迷惑をかけてしまうので、雇用環境を守ってもらいたいというご希望でした。時間もなかったため早急に譲受先を見つけました。結果、雇用環境の維持が実現され、職員の方は今でも辞めずに業務を続けています。なにより、その職員が現在資格を取り、支店長を任されていると涙ぐみながらご遺族からご報告を数年後にいただきました。
2つ目は、若くして職員十数名体制までご事務所を成長させた先生からのご相談です。
経営も順調でまだまだこれからも成長していくであろうというご事務所でしたが、お話を伺うと今後の業界の流れや3年後を考えたときに、より成長のスピードを高めるために譲渡の選択肢を検討しているとのことでした。その事務所は大手の傘下に入ることで、ブランディング化され採用や営業活動がしやすくなったと今でもご活躍されています。また、営業からマネジメント、業務まですべて一人で行っていた負担から解放され、趣味や家族、別事業への時間も増えて喜ばれていました。
5、これからM&Aを検討されている方へのメッセージをください
一言で言えば、決断の時期を間違えてほしくないです。特に弊社が支援している士業事務所は、定年という概念が無く、いつまでも現役でいられます。また、先生方は皆さん仕事や顧問先のことが好きな先生が多く、事業承継問題を後回しにしがちです。
ただ、いつかは決断の時はきます。職員や顧問先に安心してもらうためには、どれだけ所長が納得できる相手を選べるかというところが大きなポイントだと考えます。いずれにしても相手先もあることなので、なるべく事務所の業績や業務が安定している時期に進めることで、相手先の選択肢は広くなり、条件も良くなります。
M&Aは、職員や顧問先を守るための戦略です。3年後、5年後と事務所の将来を見据えてお考え頂ければと思います。さまざまな事例も増えていますので、まずはお気軽にご相談ください。
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