今まで会社を拡大する際に、自社で新規事業を立ち上げる、自社で子会社を立ち上げるなど自力で一から新規の立ち上げを検討されることが主流でしたが、近年M&Aを活用して、既に実績がある事業を買収して自社の新規事業にしたり、体制などすべて整っている会社を買収して自社の子会社にするなど、一つの戦略としてされている会社が増えてきました。
今回は、M&Aを活用して創業してわずか8年で薬局店舗数を101店舗まで増やすことができた、株式会社akホールディングスの岡田 一平(おかだ いっぺい)会長に、
- M&Aを積極的に進められている理由
- M&Aを成功させる鍵
- M&Aならではの醍醐味
などM&Aの買い手側のリアルなお話を伺わせていただきました。
また、数多くあるM&A仲介会社の中で、Growthix Capital 株式会社の取締役 村上さんを仲介担当者に選ばれる理由などについても伺いました。
これからM&Aにて会社の買収を検討されている方、M&A仲介会社の選び方で悩まれている方は、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
買手会社
- 株式会社akホールディングス
- 代表取締役 岡田 一平
- 創業:2011年
- 資本金:3億円
- 年商:97億円(2019年7月期)
- 従業員数:629名(内、薬剤師数276名)(2019年9月時点)
- 薬局店舗数:101店舗保有(2019年12月時点)
M&A仲介会社担当者
- Growthix Capital 株式会社
- 取締役 村上 宗太郎
- 創業:2019年
- 資本金:3,000万円
1、akホールディングスは店舗展開の「9割」が M&A による買収
八木:貴社がM&Aを積極的に進められている理由をお伺いできますでしょうか。
岡田会長:M&A は、新規開業と違い、売上などの将来的な収益が読みやすいです。新規開業の場合は開業に伴う市場調査などの手間がかかる上、開業後の収益は非常に読みにくいです。たとえ新規開業の方がコストを低くおさえることができたとしても当社では M&A を選ぶケースがほとんどです。
当社は、薬局や老人ホームを中心に事業展開していますが、その内の約9割が M&A による買収です。 M&Aに興味があってもなかなか進められない会社さんが多数存在する中で当社の M&A 比率は極めて高いと思います。
八木:M&Aによる買収は全体の9割も占めているのですね。
岡田会長:そうです。そして、買収した内のほとんどは M&A 後もうまくいっています。
M&A の場合は、その事業のこれまでの過程をみることができます。過去の収益をベースに先の数字を読むことができるので事業計画は非常に立てやすいです。今後も M&A を中心に拡大していきたいと考えています。
八木:薬局業界は、薬価改定などの影響で、以前に比べて収益性が圧迫されているかと思いますが、その辺りに関してはどのようにお考えでしょうか?
岡田会長:特に個人でやっている薬局や1店舗のみを運営している薬局企業の場合は、薬価改定でほとんど薬価差益が取れない状況です。しかし、グループ企業であれば、ある程度大きなロットで仕入れを行う為、薬価差益が取れます。
また、今大きな問題の一つとして、ジェネリック医薬品の推奨が取り挙げられています。ジェネリック医薬品の推奨により、一つの薬局あたりで取り扱う薬の品目数が年々増加傾向にあります。一方、薬の在庫が増えているのに対して、処方日数の長期化などにより、処方箋の枚数自体は少しずつ減っていく傾向にあります。
つまり、コストと売上が反比例している状況になり、薬局業界全体として運営が非常に難しくなってきています。
八木:昨今話題の「かかりつけの薬局」を推進することによって、薬局経営にどのような影響をもたらしているのでしょうか?
岡田会長:「かかりつけ薬局」という政策は、薬局の評価に影響をもたらしています。
在宅医療の取組みや24時間体制など、これら全ての項目をクリアして国から点数がつけられるようになります。地域支援体制加算という加算項目がありますが、これもさまざまな要件を満たす必要があります。
一つの店舗で地域支援体制加算を取るには様々なノウハウが必要であり、一つの店舗のみを経営している薬局企業の場合はノウハウにも限りがあるように思います。当社は数多くの店舗を持っているので、一つの店舗で生み出す成功例が、他の店舗でも活かせるノウハウになり、グループ会社全体としての強みになっています。
八木: 店舗の数が多い分、ノウハウも豊富ということですね。
岡田会長:チームワークですね。例えば健康サポート薬局をやりましょうとなった際に、一つの店舗で成功例を作ることができれば、他の店舗でも同じように取り組むことができます。それが、グループ企業としてのメリットですね。もちろん取り組むためのコストはかかりますが、グループ企業だから取れる採算もあるので、結果的に利益は出せます。
薬局業界で利益率を確保するには、技術料収益の拡大や仕入れコストの削減など会社規模の大きさで注力できるメリットも出てきます。
2、 M&A が活発になっている薬局業界で、 M&A を成功させるには?
八木:近年の薬局業界の変化について教えてもらえますか?
岡田会長:冒頭で話した薬価改定などの影響に加え、これらの業界変動を背景に M&A での売却を検討する薬局企業のオーナーは増えてきています。しかし、買い手企業の企業理念や風土などの経営方針にマッチしないことを理由に、 M&A が破談するケースも多々あります。当社はそのような経営方針の面で非常に強みがあるので、これまでに多くの薬局経営者に売却の相手先としてお選び頂けているのだと思います。
八木:M&A を検討する際は、売却先の経営方針も大きな判断材料なのですね。貴社の経営方針の強みとはどのような内容でしょうか。
岡田会長:akホールディングのaは「airy(=風通しが良い)」。kは「kaleidoscope(=変化に対応できる」という意味です。
薬局企業が、薬価改定や診療報酬改定などの業界変動に対応していくためには、常に新しいことに挑戦する必要があります。そうなると現場で働く従業員への負担も増えてしまいます。その為、当社では「社員ファースト」の理念をモットーに掲げています。
従業員を大事にすることができれば、離職率は低くなります。残業をなくし、従業員に有給休暇をしっかりと取ってもらうことによって、仕事のオンとオフのメリハリをつけてもらいます。頑張っている従業員は給与が上がっていく仕組みを作り、公平な給与設計を整えています。薬局を営む上で、現場で働く従業員が定着すれば、「かかりつけ薬局」の薬剤師としてそれぞれの地域の患者さんに寄り添ったサービスを提供することができます。
これらは当たり前のような話ではありますが、実現できていない薬局企業も多く存在すると思います。経営がひっ迫してしまっている企業や組織として肥大化してしまっている企業などで、現場となる一つ一つの薬局店舗までマネージメントが行き届いていない例もよく耳にします。
現場で働く従業員の満足度を向上させ、従業員が患者さんにより良いサービスを提供し、地域のみなさんに笑顔になってもらうことが自然と売上に反映されます。当社はそのような理念で薬局展開をしていくことを第一としています。
八木:まずは、社員の皆さんに笑顔になってもらい、その笑顔がお客様である地域のみなさんへ広がっていくというイメージですね。貴社の企業理念である「笑顔創造ファーマシー」(関わる全ての人が、本当の意味で、笑顔になる)の由縁ということですね。
岡田会長:はい。その通りです。また、薬局の M&A では、失敗されているケースもよく耳にします。薬局業界では、年商1億円を越えている薬局でも、赤字の薬局が多く存在します。
八木:その原因はなんでしょうか?
岡田会長:薬剤師の人材不足です。
薬剤師の給与は、他の業態に比べると比較的高いのですが、人件費の割合が粗利の6割を超えてしまうとなかなか黒字は出しにくいです。人件費の割合としては、粗利の5割までがデッドラインではないでしょうか。
八木:薬剤師の人材不足により人件費が高騰した結果、赤字に陥ってしまう薬局が多数存在するのですね。
岡田会長インタビューの後編はこちらからお読みください。
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