「事業承継特別保証制度」とは?経営者保証でお悩みの方は必見!
事業承継において、後継者がいないのが最も大きな課題となっていますが、一方、後継者候補がいるのに、新しい後継者候補は現在の経営者の経営者保証も引き継ぐことが条件となっているため、それを理由に事業承継を断るケースも6割弱存在しているそうです。
せっかく後継者候補がいるのに、経営者保証がネックで事業を承継してもらえなくなるのは一つ大きな課題となっています。
上記経営者保証の課題を解決するため、国は4月から事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度「事業承継特別保証制度」を創設いたしました。
今回の記事ではその制度の内容、制度を利用できる要件などについてまとめました。事業承継時の経営者保証で悩まれている方はぜひ最後までお読みください。
目次
1、6割弱の後継者候補は経営者保証を理由に承継を断っている
中小企業庁の調査によりますと、2025年には中小企業の経営者数は「約381万人」にものぼるようで、そのうち70歳以上の経営者のうち約半分の「127万人」も後継者未定だそうです。
未定の理由としては、77.3%は後継者が未定ですが、残り22.3%は後継者が決まっているものの、そのうちの約6割の方は個人保証を理由に承継を断っています。
出典:経済産業省 中小企業庁金融課「事業承継時の経営者保証解除に向けた 総合的な対策について」
つまり、会社を引き継ぐことによって経営者保証も引き継ぎになり、ご自身の借り入れとなることに抵抗を感じている方も非常に多いと言えます。
2、現状の融資の約9割は経営者保証つき
では、これまで経営者保証解除にどのような取組みを実施されたのでしょうか。
2014年2月に実施された「経営者保証に関するガイドライン」では、
- 企業と経営者個人の資産・経理の明確な分離
- 法人単体での十分な債務返済能力
- 適時適切な情報開示
上記3つの条件を満たした場合は、無保証で融資を受けられる可能性があると明記し、経営者保証のない新規融資は徐々に増えているものの、現状としては融資全体の約9割はやはり経営者保証がついています。
出典:経済産業省 中小企業庁金融課「事業承継時の経営者保証解除に向けた 総合的な対策について」
3、事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的対策
事業承継の後継者候補確保のネックとなっている経営者保証解除に向けて、金融機関と中小企業者の双方の取組みを促す、総合的な対策を実施することになりました。
(1)商工中金は新規融資に対しては「原則無保証化」
令和2年1月から既にスタートしているのですが、商工中金は「経営者保証ガイドライン」に決められている無保証の融資条件に則って、年間約3万件の原則無保証融資を実施し、現在35%の無保証割合を大幅に増加することを目指します。
出典:経済産業省 中小企業庁金融課「事業承継時の経営者保証解除に向けた 総合的な対策について」
(2)事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度「事業承継特別保証制度」の創設
令和2年4月からのスタートとなりますが、事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度「事業承継特別保証制度」を創設されました。
分かりやすく言えば、「事業承継特別保証制度」の要件を満たすことができれば、新・旧経営者双方の経営者保証なしに事業を引き継ぐことが可能になりました。
具体的に制度を利用できる資格要件、申込み方法などについては下記一覧表からご確認ください。
出典:経済産業省 中小企業庁金融課「事業承継時の経営者保証解除に向けた 総合的な対策について」
(3)経営者保証解除に向けた専門家による中小企業支援
こちらも令和2年4月からのスタートとなりますが、経営者保証解除に目指している中小企業に対して、専門家による支援も利用できるようになります。
専門家の支援は3ステップがあります。
ステップ1:「経営者保証ガイドライン」充足状況等の確認
経営者保証コーディネーターにて「経営者保証ガイドライン」の要件に充足していると確認を取れた企業は、「事業承継特別保証制度」を利用する際の保証料は大幅に軽減を受けることができます。
出典:経済産業省 中小企業庁金融課「事業承継時の経営者保証解除に向けた 総合的な対策について」
ステップ2:既存の公的支援施策を活用した「経理の透明性」「財務内容の強化」の支援
ステップ1で「経営者保証ガイドライン」の要件に充足していない企業に対しては、専門家による「経理の透明性」「財務内容の強化」などの支援を受けることができます。
ステップ3:経営者保証解除に向け専門家が金融機関との交渉支援
「経営者保証ガイドライン」の要件に充足している場合は、実際の金融機関との交渉の席に、専門家も同席し専門的なアドバイスをもらうことができます。
実際に専門家の支援を受ける時のスキームは、下記図を参照にしてみてください。
出典:経済産業省 中小企業庁金融課「事業承継時の経営者保証解除に向けた 総合的な対策について」
4、「経営継承円滑法」は?「事業承継特別保証制度」との違いは?
平成20年5月、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」いわゆる、経営承継円滑化法が成立しました。この法律は事業承継に伴う様々な税負担を軽減することや、民法上の遺留分の修正など、事業承継をスムーズにするための様々な支援策を講じています。
経営継承円滑法には下記3つの柱があり、それぞれが事業承継をサポートする仕組みになっています。
- 事業承継税制
- 民法の特例
- 金融支援
なお、「経営継承円滑法」の詳しい内容、適用を受けるための申請手続きなどについて詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
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まとめ
今回は「事業承継特別保証制度」について書きましたが参考になりましたでしょうか。
経営者保証がネックになかなか承継の後継者を見つからない方には非常に役に立つ対策と言えますので、これから事業承継の後継者を探されている方は、ぜひこちらの対策をご活用されるといいでしょう。
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