役員退職金を活用して節税するには?知っておきたい税務署の考え方
M&Aにて会社を売却したあとに、売却利益に対して法人なら法人税、個人なら所得税が課税されます。
節税の一つの手法として「役員退職金」を多く出すという対策が挙げられますが、実際に税務上の役員退職金の適正額はいくらなのか?具体的に金額をどのように計算したらいいのかなど、税務上での適切な処理について知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、M&Aの税金対策としての役員退職金の計算について詳しく書いていきます。役員退職金を活用して節税を検討されている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
1、役員退職金は損金処理できる金額は?
税務上では、役員退職金の金額は「損金処理できる金額」を目安にすることが一般的です。
身内のお手盛り退職金を防止するという意図で、税務所は申請された役員退職金の金額が不相当に高額と判断される場合、認められた金額を超えた部分が損金不算入となり税金がかかることになります。
税務署の判断基準としては、同業種・同規模の他企業と比べて相当と認められるような額である、つまり、実務上は判例等により示された基準を用いることが一般的です。
2、税務上のスタンダードな算出方法は「功績倍率法」
では、税務上では役員退職金はどのように算出されるのでしょうか?
実は税務署では、最もスタンダードな算出方法は「功績倍率法」を使います。
功績倍率法=退任役員の①退職時報酬月額×②勤続年数×③功績倍率
(1)会社規定をまず確認
会社に役員退職金規定があれば、まず確認するようにしましょう。
功績倍率など、一般的に税務を意識した規定ぶりになっていることが多いです。規定があれば、規定通りに対応するといいでしょう。
(2)功績倍率の目安は3倍
一般的には、功績倍率については「会長・社長3倍」などと、過去の判例を参考にした掛け目があります。
(3)「特別功労金」について
上記に加え、会社の業績に特別な貢献があった役員の「特別功労金」という規定を置いていることがあります。その特別功労金の目安は、「支給額×30%程度」だそうです。
(4)報酬月額の考え方
退任直前にたまたま報酬月額が低いときもあります。その場合、低い報酬で計算するのではなく、過去の報酬を考慮して「適正と考えられる報酬月額」を計算することもあります。
(5)役員退職金を計算してみる
では、実際に会社を売却して、社長の役員退職金を計算してみましょう。
- 退職時報酬月額:200万円
- 勤続年数:10年
- 功績倍率:3倍
- 役員退職金:200万円×10年×3倍=6,000万円
3、役員退職金を支給するタイミングは?
最後に役員退職金を支給するタイミングをみてみましょう。
大きく下記2つのタイミングがあります。
(1)役員退任のタイミングで支給
中小企業のM&Aでは、株式譲渡実行と同時に役員が退職するケースが一般的です。従って、役員退職金の損金算入のタイミングは、下記いずれかの日の属する事業年度になります。
- ①株主総会・取締役会等で支給額が確定した日
- ②実際に支給した日
(2)「実質的に退任と同じ状況」になったタイミングで支給
例えば、M&Aを機に、常勤役員を「非常勤役員」となるなどのタイミングで、実質上の退任と同じ状況のタイミングで支給することもあります。この場合、分掌変更(ぶんしょうへんこう)と言います。
しかし、分掌変更に関しては注意する必要があります。
それは「形だけ要件を満たしていても、実質的に退任と同じ状況にならないと認められない」ことです。
わかりやすく一つの例を挙げてみます。
M&Aを機に、代表取締役を退任して非常勤取締役となり、役員退職金を受け取りました。報酬もそれまでの50%になったのですが、しかし、今までと変わらず取締役会に出席して重要な契約や会社人事について権限を行使しているとなると、認められない要件に該当します。
つまり、地位・仕事内容が激変しないと「実質的に退職」にあたらず、役員退職金の損金算入は認められないのです。
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まとめ
役員退職金を活用して節税するのは一つ有効的な方法として挙げられますが、税務署の考え方を理解することが大切です。また、分掌変更になった場合の注意点もきちんと理解しておきましょう。
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