M&Aにおけるマルチプル法とは?把握すべき4つのこと
M&Aの初心者にとっては、マルチプルという言葉を初めて聞く方も多いのではないでしょうか。マルチプル法は会社価値を算定する一つの算定方法です。
M&Aにおいて、会社の価値をいかに正しく評価することが非常に重要です。会社価値を算定する方法も複数ありますが、こちらの記事では会社算定の入り口でよく使われているマルチプル法について詳しく解説いていきます。これからM&Aにて会社売却を検討されている方は、ぜひ最後までお読み頂き、マルチプル法について把握しておきましょう。
1、M&Aにおけるマルチプル法とは?マルチプルの意味は?
マルチプル法とは、M&Aにて会社の価値を算定する時に使われる一つ算定手法です。マルチプル法のマルチプルは「倍率」を意味しており、価値算定する会社と類似している上場会社の株価、純利益など、評価倍率をもとに売却予定会社の価値を算定します。「倍率法」、「類似上場会社法」、「乗数法」などと呼ばれることもあります。
なお、会社ごとに収益の構造が違ったり、成長する方向性も異なるため、類似会社の選定は非常に難しいです。選定が正しいかどうかを判断するため、「2、マルチプル法の4つの指標」で紹介する複数のマルチプルを使い、算定価値を比較することが大切です。
2、マルチプル法の4つの指標
マルチプル法には下記4つの指標があります。
- (1)EBITDA(Earnings Before Intereste,Tax,Deprecition and Amortization)
- (2)PER(Price Earnings Ratio)
- (3)EBIT(Earnings Before Interests and Tax)
- (4)PBR(Price Book-value Ratio)
では、それぞれについてみてみましょう。
(1)EBITDA(Earnings Before Interests,Tax,Depreciation and Amortization)
①ebitdaの意味
EBITDAとは、税金をひかれる前、利息支払う前、その他償却費用を控除される前の利益を言います。わかりやすく言うと「売上利益+減価償却費」を指します。
EBITDAは会計基準違い、資本構成などの影響を受けにくいというメリットがあることから、マルチプル法の中で最も多く使われています。
②ebitdaの倍率
EBITDA倍率は、「企業価値/EBITDA」にて算出することができます。M&AにおいてEBITDA倍率は4〜8倍が一つの目安とされており、何倍にするかは非常に重要になります。
非上場会社でも上記倍率を1つの目安にするといいでしょう。
③マルチプルの企業価値は?
企業価値は「株式時価総額+純有利子負債」にて算出することができます。
(2)PER(Price Earnings Ratio)
PERとは、「株価/一株あたりの利益」の計算式にて株価収益率を算出することができます。
PERを使って、売却予定の未上場会社の株価を算出してみましょう。
類似上場会社の株価は1,000円として、一株あたりの利益は200円とした場合、PERは5倍となります。PERを使って未上場会社の株価を算出するには、下記手順にて算出することができます。
①一株あたりの利益を算出
まずは一株あたりの利益を算出すること必要があり、「一株あたりの利益=純利益/発行済株式数」にて算出します。例えば純利益が100万円で、発行済株式数は1,000株の場合、一株あたりの利益は「1,000円」になります。
②株価の算出
上記にて未上場会社の一株あたりの利益は「1,000円」だと分かったので、株価は「1,000円☓5倍(PER率)=5,000円」という計算ができます。
(3)EBIT(Earnings Before Interests and Tax)
EBITとは、税金をひかれる前、利息支払う前の利益を意味します。「イービット」と呼ばれます。
EBITは「企業価値/EBIT」にて算出することができ、企業価値は「株式時価総額+純有利子負債」にて算出することができます。
(4)PBR(Price Book-value Ratio)
PBRとは1株あたりの純資産の倍率を意味し、「株価/1株あたりの純資産」にて算出することができます。
3、マルチプル法は類似会社法?メリットとデメリット
では、マルチプル法にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
以下にてそれぞれについてみてみましょう。
(1)マルチプル法のメリット
マルチプル法の最も大きなメリットは、上場企業が公開している財務数値や株価などのデータを利用し倍率にて算出することができる点です。
特に非上場会社の場合は株価がわからないので、マルチプル法を利用すれば、類似上場会社の情報から会社価値を算出することができるのです。客観的な立場から会社を評価することができます。
(2)マルチプル法のデメリット
一方、デメリットとしては類似会社を探すことが難しい点です。
マルチプル法は類似上場会社のデータを使って算出しますので、類似上場会社が見つからないと算出することができません。また、類似会社を選ぶ時の基準も難しく、具体的に
- 業種
- ビジネスモデル
などと類似している部分をきちんと分析することが重要です。全く同じ会社は存在しないので、類似会社選びはくれぐれも慎重に進める必要があります。
また、より客観的に評価をするには、4つのマルチプル法から複数の算定方法を組み合わせて使うことをオススメします。それぞれの方法に使われるデータが違いますので、計算結果にも大きく異なる可能性があります。その場合、類似会社の選定自体は本当に適切なのかどうかを判断する基準にもなります。
4、DCF法とは?マルチプル法との違いは?
会社の価値を算定する際に、DCF法もよく使われています。
(1)DCF法とは
DCF法とは、会社将来のキャッシュフローに焦点をあて、会社の現在の価値を算出する方法です。つまり、会社が将来に生み出すであろうキャッシュフローから企業価値を算定しますので、それを根拠にする事業計画、算定する仮設条件が適正じゃないと大きく損失をかぶる可能性があります。
(2)マルチプル法との違いは?
将来に生み出すであろう利益を基に会社価値を算出するDCF法と比較して、マルチプル法は類似会社を基準に会社価値を算出しますので、より具体的に評価することができると言えるでしょう。
他にも会社価値を算定する方法がありますので、詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
(3)とりあえず会社価値を知るには?
実際に売却するかどうかを明確にしておらず、とりあえず自分の会社の価値を知りたい方も多くいらっしゃるでしょう。
その場合は、わずか1分で無料にてあなたの会社価値を査定できる「M&Aリサーチ」をぜひ活用してみてください。
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まとめ
今回はマルチプル法について書きましたが、ご理解頂けましたでしょうか。
具体的な算定は専門家が対応してくれますが、仕組みについてご自身でも把握しておきましょう。
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