M&Aにて会社の買収を検討する時に、銀行から買収ファイナンスを借りることは非常に重要なファクターと言えます。
どんなにいい売手会社を見つけたとしても、資金調達ができないと何も始まりません。銀行はどの基準で融資の判断をしているのか、融資する方法などについてM&Aをする前に知っておきたいところです。
また、M&Aにおいて銀行との手続きは買手会社だけではなく、融資がある売手会社もきちんと連帯保証を解除できないと会社は売れません。そこで今回の記事では、M&Aをするにあたって、銀行での手続き、ファイナンスの調達方法などについて書いていきます。これからM&Aを検討されている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1、M&Aにおいて買手会社と売手会社の銀行との手続きは?
M&Aにおいて、買手会社と売手会社はそれぞれ銀行とは下記のような手続きが発生します。
(1)売手会社
売手会社は、M&Aにて会社を売却するときは下記のような手続きが発生します。
- 個人の連帯保証の解除
- 個人所有している不動産などの担保解除
(2)買手会社
買手会社は、M&Aにて会社を買収するときは下記のような手続きが発生します。
- 買収ファイナンスの融資
- 親会社保証、担保
2、M&Aの融資は簡単ではない
M&Aの融資は簡単ではありません。なぜならば、大きく下記3つの理由が挙げられます。
- (1)担当者はM&Aに慣れていない
- (2)信用力は非常に重要
- (3)実績の収支計画が大切
では、それぞれについてみてみましょう。
(1)担当者はM&Aに慣れていない
まず挙げられるのは、銀行の担当者はM&A融資に慣れていないことです。
場合によって、支店長ですら分かっていない銀行もありますので、M&Aの実績が多い銀行に交渉することが大切と言えます。
(2)信用力は非常に重要
銀行が融資の審査をする時の基準は大きく2つのポイントがあります。
①対象会社は単体で返済できるのか
銀行にとっては、「貸したお金は必ず返してもらわないといけない」というスタンスなので、融資額に対して対象会社は単体で本当に返済ができるのかの審査を行います。
そのため、会社の経営状況を隈なく調べることになります。格付が低い会社に対しては、銀行は保全として不動産などを担保にしてリスクヘッジします。
②親会社の信用力
対象会社単体の格付が低い場合、親会社がいる会社は親会社の信用力を調べます。
対象会社の格付が低くても、親会社が上場会社など格付が高い場合、融資がおりる場合もあります。
(3)実績の収支計画が大切
銀行が融資の審査をする時に、M&Aをしたあとのシナジー効果を勘案した収支計画を提出しても、基本稟議では使用されません。なぜならば、シナジー効果を含めた収支計画はあくまでも想定のシミュレーションになるからです。実際に稟議では実績を基準に判断します。
なお、M&Aを実施することによって、確実にコスト削除することができるのが分かっている場合、それを加味したシミュレーションを提出することによって、融資の審査を行ってくれます。
3、銀行の格付!格付が低い会社は保全が必須
既に銀行に借り入れがある会社は与信先といって、銀行は基本年に1回格付を見直して、債務者区分を判定します。
債務者区分は以下のようになっています。
- 正常先
- 要注意先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
銀行の債務者区分で「要注意先」以下と判定された場合、お金が返ってこない可能性が高いとのことで、M&Aにおける融資は非常に厳しくなると言えます。
その場合、銀行は保全を取ってリスクヘッジを行います。保全として不動産の担保、有価証券などが挙げられます。もちろん、担保価値が高いモノの方が融資に有利です。
4、2つの融資方法!プロパー融資と保証協会融資
M&Aの融資において、大きく2つの種類があります。
(1)プロパー融資
プロパー融資は、わかりやすく言えば協会保証がつかない融資になります。プロパー融資について詳しくは買手会社の記事を参照にしてみてください。
(2)保証協会融資
保証協会融資とは、万が一融資を受けた会社(与信先)が倒産などによって返済ができなくなった場合、銀行の債権が保証協会に移り、保証協会が代わりに返済するとのことです。
銀行にとっては、保証協会融資の場合はほとんどリスクがないと言えます。
なお、保証協会融資の場合、信用保証協会が審査を行ってから銀行が審査しますので、時間がかかること注意する必要があります。
5、売手会社の連帯保証の解除が必須!その2つの方法
連帯保証がついている売手会社は、M&Aにて会社を売却する場合、その連帯保証を解除することが必須条件になります。
連帯保証を解除する方法は大きく2つあります。
(1)完済して解除する
一つ目の方法はわかりやすく、今の債務を完済して連帯保証を解除することです。
(2)保証を切り替えて解除する
二つ目の方法は、連帯保証人を買手会社、もしくは買手会社の代表に切り替えることによって、解除することができます。
しかし、その債務は保証協会融資の場合、原則保証の切り替えはできないため、連帯保証を解除するには債務を完済する方法しかないこと注意してください。
(3)売手会社に担保がある場合
M&Aにおいて、売手会社の格付が低く株式譲渡、かつ会社資産を担保につけている場合、そのまま買手会社にうつりますので、特に問題ありませんが、売手会社の代表の個人で所有している不動産、資産などが担保になっている場合、担保解除するときは銀行の承認が必要です。
なお、担保解除することによって、銀行にとって回収リスクが高まるという判断をされた場合、審査に時間がかかること注意しましょう。
6、私募債により資金調達する方法もある
私募債とは、買手会社が社債を発行し、少数の投資家が直接に引き受けて、資金調達する方法です。
私募債の場合、基本的に保証人の切り替えができず、また、社債なので返済という扱いではなく、途中解約という手続きになるため、解約時にペナルティが発生することを注意する必要があります。
下記銀行保証つき私募債のスキームを添付しますので、参考にしてみてください。
出典:三井住友銀行
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まとめ
M&Aにて会社の買収を検討するときは、銀行より資金調達は非常に重要なファクターです。
会社の与信力は銀行が融資する時の判断基準となりますので、これから会社買収を検討されている方は、会社の与信力を上げていくことも大切と言えるでしょう。
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