こちらの記事をお読みの方の中で、後継者問題で悩まれている方も多いのではないでしょうか。
- 子どもに引き継ごうと思っていたら、子どもは全く引き継ぐ意思がなかった
- 子どもには経営者の素質がなかった
- 子どもが引き継いてくれるけど会社の将来性に不安がある
- そもそも後継者がいない
など、会社の後継者で様々な問題が起きています。
今回は後継者問題になる理由を分析し、その解決策について書いていきます。後継者問題を抱えている現経営者に、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1、なぜ後継者問題が起きているのか?その4つの原因は?
まず最初に、後継者問題になる原因について書いていきます。大きく下記4つの原因が挙げられます。
- (1)身内に後継者になれる人がいない
- (2)後継者の育成が難航している
- (3)事業の将来性に不安がある
- (4)負債が大きく連帯責任の引継ぎができない
では、それぞれについて見てみましょう。
(1)身内に後継者になれる人がいない
中小企業の後継者選びでは、最も多いのは子ども、配偶者などと身内から選ぶケースです。
その場合、
- 子どもに引き継がせると思っていたら、子どもには引き継ぐ意思がなかった
- 子どもには引き継ぐ意思があったけど、経営者の能力がなかった
など、一方通行により、後継者に適任する人がいないというのが一つの原因として挙げられます。
帝国データバンクが2018年に実施した「後継者問題に関する企業の実態調査」では、日本企業において後継者がいない企業はなんと約7割もある、10社のうち7社は後継者がいないという非常に深刻な状態になっているそうです。
(2)後継者の育成が難航している
後継者を育成するには、ケースバイケースですが、大体10年かかると言われているほど非常に長い期間を要します。
会社の業務だけではなく、会社経営も教えないといけないからです。それに、会社の役員、幹部に認めてもらう必要もあるため、人より何倍の努力も必要です。
また、中小企業の場合、現経営者のカリスマ性で会社を経営しているケースも多くありますので、それを超えなければいけないという高いハードルもあります。
(3)事業の将来性に不安がある
会社を立ち上げた頃とは異なり、今の日本は少子高齢化などの影響で、様々の業界において業界再編が進んでいます。
その中で、今の事業が古かったりなどの原因により、このまま後継者に会社を引き継いても、将来性に不安を感じるケースも多くあります。
事業の見直し、新しいサービスの導入など、事業拡大する施策も考えなければいけません。
(4)負債が大きく連帯責任の引継ぎができない
中小企業で融資を利用されている会社も多くあります。一般的には経営者はそれらの融資の連帯保証人になるのがほとんどです。
そこで後継者に会社を引き継ぐとなった際に、金融機関からにすると、新しい後継者に対する信用問題の審査がおりず、現経営者の連帯保証責任が引き継げないという問題が起きることもあります。
2、後継者問題の4つの解決策
では、上記のような後継者問題を解決するにはどうしたらいいでしょうか。
大きく以下4つの解決策が挙げられます。
- 役員などによる内部承継
- M&Aによる外部承継
- ファンドに売却する
- 会社を廃業する
では、それぞれの解決策について見てみましょう。
3、役員などによる内部承継
子どもなどの身内で後継者となれそうな人がいなかった場合、会社に所属している優秀な役員に会社を引き継がせるのは一つの選択肢として挙げられます。
会社の役員、経営幹部に会社を引き継ぐ場合、マネジメントバイアウト(MBO)と呼ばれています。
帝国データバンクが2018年に発表した「全国後継者不在企業動向調査」では、
- 配偶者
- 子ども
などの身内への承継率が下がっていて、
- 非同族
への承継が増えていることが分かります。
出典:帝国データバンク「全国後継者不在企業動向調査」(2018年)
(1)役員などによる内部承継のメリット
役員や経営幹部による内部承継の最も大きなメリットは、やはり会社のことが熟知していることで、短期間にてスムーズに承継することができるところです。
また、会社の役員や経営幹部の場合、社員から反発されるという懸念点も心配しなくて済むというのも一つのメリットです。
(2)役員などによる内部承継のデメリット
一方、デメリットというか、問題点は大きく下記2つあります。
①株を買い取る資金難
まず一つ目の問題点は、株を買い取る資金の準備が難しいことです。
MBOにより会社を承継する場合、その買取金額は「時価」にて決められるのが一般的です。15〜20人規模の会社は、株価は2〜3億円になるのが多く、100〜200人規模になると、株価は5〜30億円と大きく金額が跳ね上がるのも多くあります。
役員とは言え、億単位の資金を用意するのはなかなか難しいと言えるでしょう。
②連帯保証が引き継げない
会社を買い取るとなると、その会社の全ての債務も引き継ぐことになりますので、現経営者が連帯保証とされている債務も、後継者が引き継がないといけないです。
会社を買い取る金額の融資がおりたとしても、更にご自身に連帯保証責任をつけられることになるため、ご自身に資産があるなど高い信用枠がないと、なかなか金融機関から了承が出ないでしょう。
(3)MBOの解決策
MBOの課題となる資金難を解決するには、
- メガバンク、大手商社などが設立した「PEファンド(プライベート・アクイティ・ファンド)」
- 事業承継のニーズがある地方銀行が出資する「事業承継ファンド」
などのファンドを活用することが一つの解決策として挙げられます。
この場合、現経営者からの申立てによりファンドに会社を売却して、株主となったファンドが後継者となる役員を社長に任命するという流れになります。こうするとことによって、本来後継者となってほしい役員の資金難を解決して、会社を引き継ぐことができます。
4、M&Aによる外部承継
2つ目の解決策はM&Aによる外部承継です。分かりやすく言うと、会社を売却することです。
衆議院調査局経済産業調査室が2019年2月に実施した「最近の企業動向等に関する実態調査」では、事業承継において5割以上の方はM&Aに対して前向きな姿勢を見せています。
出典:衆議院調査局経済産業調査室「最近の企業動向等に関する実態調査」
(1)M&Aによる外部承継のメリット
M&Aによる外部承継のメリットとしては、後継者がいない問題を解決できた上に、会社の将来性を考えて、新たなサービスの導入など、会社を存続させ、成長させることも可能になります。
大手の傘下になることができれば、
- 優秀な人材
- 豊富な資金
- 販売ネットワーク
など様々な観点からメリットが生まれ、シナジー効果を最大化に活用することができます。
会社を売却することによって、自分の会社じゃなくなるという寂しさはあると思いますが、会社のため、社員のためと思えば、いい選択肢と言えるでしょう。
(2)M&Aによる外部承継のデメリット
会社を売却するには様々な煩雑な手続きが伴います。せっかく売却するのであれば、できる限り会社を高く売りたいでしょう。そのため、会社の価値を高めたり、売却価格交渉などが非常に重要になってきます。
会社の売却で成功する方もいれば失敗する方もいらっしゃいます。失敗しないために、
- 公認会計士・税理士
- 弁護士
- MAアドバイザー
など専門家のアドバイスをきちんともらうようにしましょう。
以下にてそれぞれの分野の専門家をピックアップしましたので、ぜひ一度問合せしてみてください。
①エンサイドコンサルティング株式会社(公認会計士)
②西村あさひ法律事務所(弁護士)
URL:https://www.jurists.co.jp/
③(株)ストライク
なお、M&Aの基礎知識、おさえておくべきポイントなどについてはM&Aの記事を参照にしてみてください。
5、ファンドに売却する
「3、役員などによる内部承継」にて、後継者となる役員が資金難となった時の解決策としてファンドに売却するというお話しをしましたが、こちらでは最初からファンドに売却するという解決策です。
(1)ファンドに売却するメリット
ファンドに売却するには以下のメリットが挙げられます。
- ファンドに経営のプロが多くいるため、経営戦略や財務など的確なアドバイスをしてくれる
- 優秀な人材を派遣してもらえる
- ファンドの人脈を使って、事業の拡大に繋がる
- 事業の独立性を維持できる
「ベンチャーファンド」、「再生ファンド」などを利用するといいでしょう。
(2)ファンドに売却するデメリット
一方、ファンドはシナジー効果を考慮せずに会社の売却価格を算出しているので、営業権を考慮しないため、普通の企業に売却するより売却価格が低くなるデメリットが挙げられます。
ファンドは将来性がある会社、事業じゃないと投資しないので、投資基準を高く設定しているため、そもそも買ってもらえないというリスクも考えられます。
そのため、会社の価値を高めることも検討する必要が出てきます。
6、会社を廃業する
最後に会社を廃業するという解決策について書いていきます。
帝国データバンクが2018年に発表した「全国後継者不在企業動向調査」のデータによると、2018年10月時点で後継者難を理由に倒産した会社は316件あり、前年より11.3%も上昇しています。
出典:帝国データバンク「全国後継者不在企業動向調査」(2018年)
(1)会社を廃業するメリット
せっかく育ってきた会社だから、できれば廃業させたくないと思われている経営者も多いでしょう。
廃業をすることによって、会社が抱えている負債など全て清算することができ、会社登録を抹消することができます。
(2)会社を廃業するデメリット
一方、デメリットとしては、ご自身はきれいに会社を清算することができますが、
- 取引先
- クライアント
- 従業員
に迷惑をかけてしまうというデメリットがあります。
また、会社を廃業する前に、負債の清算をする必要があり、資金がある会社ならまたしも、資金がない会社だと清算することができず、倒産に追い込まれることもあります。
逆に言えば、廃業することができる会社はいい会社とも言えます。廃業の前に上記で紹介した解決策をぜひ検討して頂きたいものです。
会社の廃業する時の手続きなどについて、詳しくは会社廃業の記事を参照にしてみてください。
7、セミナーにて情報収集する
問題解決するには、まずご自身にある程度の知識が必要になります。
そこでご活用して頂きたいのはセミナーです。
なお、定期的にセミナーを開催している会社が少ないため、ぜひ開催された時に積極的にご参加ください。
以下にて事業承継をテーマにした3つのセミナーをピックアップしました。
(1)「スムーズに事業承継したい経営者のための基礎知識」セミナー
URL:https://enside.link/business-succession-seminar/
こちらのセミナーは、エンサイドコンサルティング株式会社の主催です。エンサイドコンサルティング株式会社は、会計事務所、税理士法人、社労士法人と士業の専門集団です。
M&Aの豊富実績を活用し、M&Aの実務、税金などをテーマとしたセミナーを定期的に開催しています。
事業承継の入門セミナーになっており、事業承継を検討されている方は参加してみるといいでしょう。
(2)事例で学ぶ!失敗しない事業承継〜経営者が押さえておくべきポイント〜
URL:https://www.tokyo-kosha.or.jp/topics/1905/0001.html
こちらのセミナーは、東京都中小企業振興公社が主催しています。
事例を交えながら、実際に事業承継をする時に経営者が押さえておくべきポイントを教えてくれますので、参考になるお話しが聞けるでしょう。
(3)人生100年時代の事業承継には後継者の強みを出す知恵が必要!
URL:http://www.jigyousyoukei.co.jp/2019/05/11702/
こちらのセミナーは事業承継センターが主催しています。
今の事業をそのまま承継するのではなく、時代の変化に変更できる経営承継のノウハウを教えてくれます。新しい事業を検討されている方はぜひ参加してみてください。
なお、セミナーについてもっと詳しく知りたい方はセミナー紹介の記事を参照にしてみてください。
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まとめ
今回は後継者問題になる原因、それから解決策について書きましたが、参考になりましたでしょうか。
日本の企業のうち、約7割の会社が後継者問題を抱えています。あなた1人だけの問題ではないので、ぜひ専門家に相談して、ご自身の会社に最も適した解決策を見つけて頂けたら幸いです。
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