店舗展開の「9割」が M&A による買収 | 株式会社akホールディングス 代表取締役 岡田 一平(後編)

前篇に続き、後編では

  • M&A 仲介会社の活用方法
  • 会社買収するときのポイント

など、岡田会長が実際にM&Aであった苦労話を伺わっていきますので、ぜひ最後までお読みください。

買手会社

  • 株式会社akホールディングス
  • 代表取締役 岡田 一平
  • 創業:2011年
  • 資本金:3億円
  • 年商:97億円(2019年7月期)
  • 従業員数:629名(内、薬剤師数276名)(2019年9月時点)
  • 薬局店舗数:101店舗保有(2019年12月時点)

M&A仲介会社担当者

  • Growthix Capital 株式会社
  • 取締役 村上 宗太郎
  • 創業:2019年
  • 資本金:3,000万円

1、M&A を成功させる鍵は、 M&A 仲介会社の活用

八木:M&A は7割以上が失敗するとも言われていますが、その中で多数の M&A をされてきた岡田会長は色々なご経験がおありだと思います。買い手企業として注意するポイントをお伺いできればと思います。

岡田会長: M&A の場合は、売り手企業と買い手企業の交渉の中で、マイナス要素が後から出てくることが多々ありますね。

例えば基本合意の後に、実は従業員の退職金がこれだけ溜まっているとかの話が出て、この債務は売り手企業が持つのか、買い手企業が持つのか、などの話になるケースもあります。

法人譲渡の場合は、これは100%買い手企業が追うべく債務になります。いわゆる簿外債務と言われるものです。また、リースなどについても、未上場企業では会計上は負債項目に記載する必要はないのですが、契約前ではなく契約後に発覚すると、買収金額の差引が生じるなどのトラブルの原因になります

八木:簿外債務でトラブルになるケースが多いのですね。

このようなトラブルはどのように回避しているのでしょうか?

岡田会長:トラブルを未然に防ぐ為にも、 M&A 仲介会社の担当者が間に入って、しっかりと事前に売り手企業の情報をヒアリングできていれば回避できると思っています。仮に後から出てきても、中立的な立場で双方の主張を聞いて成約へ導いてくれるので、 M&A は仲介会社の役割が非常に大きいと感じています。とくに、村上さんが仲介に入ってくれている案件に関しては、一度も揉めたことがないですね。

八木:M&A では、仲介会社の役割が非常に重要なのですね。

岡田会長:その通りです。成約に至るまでの過程で、資料の受け渡しなど手間暇がかかる折衝も多く、その他、毎日のように売り手企業のオーナーとコンタクトを取るなど一筋縄にはいかないのが M&A です。

2、 M&A をした会社の社員が全員辞めた?

八木:会議室に貼っている日本地図を拝見したのですが、貴社が展開される全店舗を貼っているのですね。

多数の M&A を行ってきた岡田会長は様々な思い出があると思いますが、最も印象に残っている M&A の苦労話を伺ってもいいですか?

岡田会長:薬局を買収した後に、その薬局の従業員が全員辞めてしまった時は大変でしたね。

八木:全員ですか?

岡田会長:薬剤師4名、事務4名の計8名いたのですが、全員辞めてしまいましたね。

M&A の買収金額には「のれん代」の概念がありますが、従業員が継続することで初めて今まで営業してきた「のれん」を守ることができます。このように従業員が全員退職してしまうと、その「のれん」の価値が低くなってしまい、新たに確保する従業員の採用コストなども加味しなくてはならない為、買収金額はやはり安くなるわけです。

八木: M&A は事業の買収なので、人材の雇用も含め、買収金額の算出をしているのですね。

岡田会長:既存の従業員全員が辞めた時は、処方元のドクターや患者さんと一から関係構築をし直さなければならない等、対応に大変苦戦しました。相当な労力がかかったのですが、当社の慣れ親しんだ従業員の協力のもとでなんとかやり遂げた時の達成感はやはり大きかったですね。

八木:それは、M&A を実行する前には分からなかったのでしょうか?

岡田会長:分かりませんでしたね。 M&A 前には「 M&A 後も残って頂ける」と聞いていたはずの従業員が、「実は以前から辞めようと思っていて、会社が変わるならこれが辞めるいいタイミング」と言い出したのです。

八木:もともと辞めようと思っていたのですね。

岡田会長:従業員が辞めたそうにしているのも売却する一つの背景のようで、売り手企業のオーナーもすごくご苦労されていたようです。このように想定外のことが起きるのは M&A のリスクと言えるでしょう。

3、多数ある M&A 仲介会社の中で、村上さんを選ばれる理由は?

八木: M&A はいろいろな判断材料が必要で、なかなか将来性が読めない部分もありますよね。先ほどのお話しの中で M&A を成功させるためには、 M&A 仲介会社の役割が非常に重要と仰っていたと思いますが、数多くある M&A 仲介会社の中で村上さんを選ばれる理由をお伺いできますか?

岡田会長:やはり「 face to face 」での対応を大切にしているところですね 。当社のこともちろんですが、売り手企業側の深いところまで把握をされています。またその上で、当社に合った M&A の提案をしてくれています。

村上さんは、相手の気持ちに寄り添った営業スタイルを大切にしています。システマチックに、単に高い値段の価格提示を受ける買収先に提案するのではなく、当社にとっていい店舗はいい、そうじゃなければ紹介しない。また、事前に売り手企業と当社の双方に対して、相当な情報共有をしてくれています。私が売り手企業のオーナーと初めてお会いする際も、お互いが分かりあった状態になっているので、非常に効率的に商談を進めることができています。

八木:事前に細かい情報収集をして、それを貴社や売り手企業のオーナーへもきちんと共有されているのですね。

岡田会長:情報共有だけではなく、価格の交渉も済ませてくれています。 M&A 仲介会社の中には資料だけを送って来て、実際に交渉を進めると聞いていた話とまったく違うというようなトラブルが起きることも多々あります。村上さんの場合は当事者同士で交渉させるのではなく、村上さん自身が間に立って、適正に交渉してくれています。後々に起こりうるトラブルなどもすべて想定し、事前に対応を済ませてくれているので、安心して任せられていますね。

八木:最近、 M&A でもマッチングサイトなどが出てきたのですが、やはり、「 face to face 」が M&A を成功させる大きな鍵になっているのですね。

岡田会長:村上さんには、これまでに多数の M&A を成約させて頂きましたが、ご紹介頂いた M&A の中には、売り手企業のオーナーと初めてお会いしたその日に「よろしくお願いします」と握手ができる状態まで話が終わっているケースもありました。

M&A は確認する事項が非常に多く、交渉が始まり成約に至るまでに大変時間を要します。このように事前に話を進めて頂いていることはとても有り難いです。

八木:会うまでにほぼ交渉が終わっているというのは素晴らしいですね。そもそもそのスキルがない M&A 仲介人も多いと思います。

岡田会長:そうですね。また、 M&A 仲介会社はアフターフォローをしない会社が多いですが、村上さんはきちんと対応してくれます

譲渡して1ヶ月先や3ヶ月先にも何かある場合もあるじゃないですか。そのような些細な相談に対しても適正に対処してくれています。

八木: 実際に譲渡してからじゃないと分からないことも多いので、フォローしてくれるのは大切ですね。

万が一揉めてしまうと今後の事業計画にも影響が出てくるでしょう。

岡田会長:未然に防ぐことが大事です。

4、会社買収するときのポイントは?

八木: M&A は、取引金額が大きいため、「万が一、失敗したら」と実施することに躊躇してしまう会社も多いかと思います。

M&A 実績が豊富な岡田会長に「買う、買わない」の判断基準をお伺いできますでしょうか?

岡田会長:やはり会社や事業の将来性があるかないかを最初に見ます。

例えば、薬局の例で言うと、集中率が高い門前薬局の場合は、処方元であるドクターのポテンシャルは非常に大事ですよね。その場合はご高齢なドクターよりも、若くて将来性があるドクターを選ぶでしょう。

あとは、薬局店舗の立地ですね。その地域の人口が増えるどうかは非常に重要で、人口が減ってしまう地域は当然、処方元も増えず、薬局に来る人口が減ってしまうので M&A を検討するのは難しいです。

八木: 将来性があるかどうかに人口の増減は大きく関わりますね。

岡田会長:処方元や人口の増減はそうですが、その他に直近 3年以内にできた競合先は無いかなども調査します。

競合する薬局がたくさん存在しているところは、既に落ち着いているのでいいのですが、直近2、3年内に競合先ができた、もしくはこれから開業予定の開業医と薬局がセットにできるなどの情報があればそれらも事前に調べます。

八木:いろいろと調査する情報はあると思いますが、それらを調査するのに大体どのくらいの期間がかかるのでしょうか?

岡田会長:10日から2週間前後が多いです。

八木:人口の増減についてはどのように調査されていますか?

岡田会長:特定されてしまうなどの機密事項に該当しない分野においては、地域の卸し業者などの業界の人に聞くことが多いですね。

八木:地域の方の情報はリアルですね。

岡田会長:また、国土交通省など国が出しているデータも参考にします。

5、 M&A の一番の醍醐味は「1+1=2以上」のシナジー効果が得られること

八木:自社で新規事業を立ち上げる、自社で子会社を立ち上げるなど自力で一から新規の立ち上げを検討されている会社はまだまだ多いと思います。

そのような会社さんに M&A を検討してもらう一つのきっかけとして、ぜひ岡田会長の熱いメッセージを頂ければと思います。

岡田会長:当社akホールディングスは薬局以外にも、老人ホームなどの介護事業やファミリーマートを通した物販、人材紹介などもやっています。事業を拡大していくなら必ずシナジー効果があることが非常に重要だと思います。「1+1=2」のことは誰でも簡単にできるのですが、 M&A の一番の醍醐味は「1+1=3にも4にもなる」ということです。

八木:M&A だからこそ得られるシナジー効果ですね。

岡田会長:新規で事業を立ち上げる際は、ゼロからのスタートになりますが、 M&A は既に存在する事業を譲り受け、その後更に拡大をしていくということです。すなわち M&A は、売り手企業のオーナーやそこで働く従業員が作って来た歴史を譲り受け、それを単に「継続」するだけではなく「拡大」していかなければならないという責任があります

新規事業の立ち上げと M&A では事業のスピードも大きく異なります。これらの M&A でしか得られないシナジー効果も会社を拡大していく上での非常に大きな経営戦略の一つであると思います。

八木チエ

八木チエM&A INFO プロデューサー

投稿者プロフィール

大学卒業後、7年間IT会社の営業を経験し、弁護士事務所に転職。
弁護士事務所で培った不動産投資の知識を活かし、業界初の不動産投資に特化したメディアを立ち上げ。2018年に株式会社エワルエージェントを設立。不動産投資「Estate Luv」、保険「Insurance Luv」などのメディア運営やメディアのコンサル事業に特化。
M&A業界が盛んになった今、M&Aの情報を正しく伝えたい、もっと多くの人にM&Aの魅力を知ってもらいたいと思い、M&Aに特化したメディア「M&A INFO」を立ち上げ。より有益な情報を多く配信している。

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