マンデートとは、本来の英語の意味で言うと「命令」や「指示」などを意味しますが、ビジネスの場面では「権限を委譲すること」として多く使われています。
そして、M&A業界では、よく使われる用語であるため、その意味や使い方を知っておいた方がよいでしょう。
今回は、M&A業界において、マンデートとは?その意味や使い方、マンデート後、M&A仲介会社がどのような業務を行うのかなどについて解説します。
目次
1、マンデートとは?
マンデート(mandate)とは、直訳すると「命令」、「指示」と言った意味になります。一般的には「委任された権限」という意味です。要するに、「あることを代わりに行う権限を他人に与える」という意味と捉えてよいでしょう。
そして、マンデートという言葉は、金融、政治、外交など、さまざまな専門分野で使われています。
2、M&A業界におけるマンデートの意味とは?
このマンデートという言葉は、M&A業界において、「仲介契約書」あるいは「業務委託契約書」の意味でよく使われています。
つまり、マンデートとは、M&Aの専門家へその仲介やコンサルティングを依頼する際に、仲介契約及びアドバイザリー契約を締結する際の契約書のことを言います。
単に契約を交わす書類と言っても、その内容は豊富で、詳細な内容までしっかり詰めた後に契約という形で契約書を交わします。そして契約書を交わしたことを、M&A仲介会社では「マンデートを獲得した。」という言い方が使われます。一般事業会社では「契約を勝ち取った。」と言ったイメージでしょうか。
3、M&A業界でのマンデート獲得の意味
マンデートを獲得するということは、M&A業界ではM&Aの専門家が依頼者と仲介契約を締結することを意味します。
多くのM&A仲介業者は、まずは、このマンデート獲得を目的として、日々、業務を行っています。
マンデートを獲得することによって、M&Aの専門家は買収先や売却先の選定及び企業価値の算定、交渉、各種書類の作成など、M&Aに関するあらゆる手続きの仲介を行います。
4、M&A業界でのマンデートの効力
M&A業界におけるマンデートの効力は、基本的にはM&Aが成立し、その効力が発生する日、つまりM&Aが成立した日まで有効となります。
契約によっては、M&Aが成立した後、事業統合までマンデートの効力が継続する場合もあります。
また、特定のM&A専門家との間でマンデートの効力が発生している間は、専属契約となり、他のM&A専門家と仲介契約できないのが業界慣行となっています。
5、M&A業界におけるマンデート後の主な業務
M&A業界におけるマンデート後の業務は、主に以下の手順で行われます。
- (1)M&Aに向けての本格的な戦略策定
- (2)会社売却・買収の手続き
- (3)各種契約書の締結
- (4)デューデリジェンスや条件交渉
- (5)クロージング
(1)M&Aに向けての本格的な戦略策定
マンデート後は、M&Aの手続きに進む前に、まずはM&Aスキームやスケジュールなど本格的なM&A戦略計画を策定します。
また、売却側ではおおよその売却価額の決定や、企業価値を上げるための計画などを策定します。
(2)会社売却・買収の手続き
M&A戦略が策定できたら、売却・買収の手続きを行います。ここで、最適な売却先・買収先を探し始め、交渉を行っていきます。
(3)各種契約書の締結
売却先・買収先が決まれば、売買契約書の締結を行います。場合よっては、株主総会の開催や債権者保護手続き、従業員や取引先からの個別の同意なども必要になります。
契約書には、M&Aの目的や方法、売買価格、スケジュールなどを記載します。
仮に、契約書に不備があると、スケジュールが延期となるばかりでなく、M&A自体が頓挫することもあるので、M&Aの専門家に作成を依頼し、よく確認しておくようにしましょう。
(4)デューデリジェンス及び条件交渉
M&Aで重要となる手続きが、デューデリジェンス及び条件交渉です。デューデリジェンスとは、企業精査のことを言い、企業の財政状態や経営成績の実態を事細かに調査します。
デューデリジェンスは専門家に依頼し、慎重に行う必要があります。なぜなら、買収後に予期せぬリスクが発覚した場合、大きな損失を被る場合があるからです。例えば、買収予定会社が多額の簿外債務を抱えていた場合、それが買収後に発覚すると、悲惨な状況になりかねないのです。
また、条件交渉が難航した場合、M&A成立までの期間が長くなり、場合によってはM&Aの話自体がなかったことになるかもしれません。
デューデリジェンス、条件交渉には、豊富な専門的知識や経験が求められるので、M&Aの専門家の協力を得て、的確でスムーズな手続きを行う必要があります。
(5)クロージング
問題なく手続きが進行し、M&Aの効力発生日を迎えたら、クロージングとなります。
一般的には、クロージングの段階でマンデートの効力は終了となりますが、M&A仲介会社によっては、アフターフォローとして、M&A後の統合プロセスや経営コンサルティングを依頼することもあります。
なお、買手会社のマンデートの詳しい内容については下記記事を参考にしてみてください。
一方、売手会社の下記記事を参考にしてみてください。
6、M&A仲介業者に依頼するメリット
M&A仲介業者に業務を依頼すると、売り手側・買い手側の双方にとって以下のようなメリットがあります。
(1)売り手側のメリット
売り手側からすれば自社の売却価額を算定する際に、自社の価値を適正に見積もってもらうことができます。またM&Aアドバイザーの専門知識や経験に基づく観点から様々なアドバイスをしてもらえ、必要な情報を提供してもらうことより、買い手側との交渉をスムーズに行うことができることもメリットとして挙げられます。
(2)買い手側のメリット
一方、買い手側にとってもメリットがあります。M&Aのために必要な書類の作成や情報収集の作業などを、マンデートを交わしたM&A担当者に依頼することによって、専門的な観点から客観的に判断を行ってもらえ、様々なアドバイスをしてもらうことが可能となります。
さらに理解しておかなければならないM&Aに際しての様々なリスク(買収会社の潜在的なリスクなど)を見落とす可能性も少なくなるでしょう。
売り手側・買い手側にとってのこうしたメリットは、当然ながら、経験豊富な信頼できるM&A仲介業者とマンデートを交わすことによって得られるものです。従って、どこのM&A仲介業者に依頼するかということは重要なポイントになります。
7、信頼できるM&A仲介業者の見分け方
では、信頼できるM&A仲介業者の見分け方について解説します。
(1)「上場」か「非上場」か?
数多くあるM&A仲介業者の中からマンデート先を選ぶには、「信頼できるか」ということは非常に重要です。簡単な判断基準の1つとして「上場している」か「非上場なのか」という観点があります。
上場企業は専門家も多く抱え、大型案件も多くこなしている点から実績という点では問題ないでしょう。ただし、コストという面では少々高くなりがちです。
東証一部上場で実績のある主なM&A仲介業者は以下のとおりです。
①株式会社ストライク
なお、会社の特徴、会社に対する思いなどについて荒井代表のインタビュー記事をご覧ください。
②M&Aキャピタルパートナーズ株式会社
など。
一方、仲介業務やコンサルティング業務はそれほど資本力を必要としているわけではありません。そのため、非上場であっても優良なM&A仲介会社はたくさんあります。主な非上場M&A仲介会社は
①株式会社インテグループ
「完全成功報酬制」を特徴としている藤井代表のインタビュー記事をぜひお読みください。
②ジャパンM&Aソリューション株式会社
「相談されたら断らない」を特徴としている三橋代表のインタビュー記事をぜひお読みください。
③株式会社クラリスキャピタル
「M&Aを戦略に」と話している牧野代表のインタビュー記事をぜひご覧ください。
また、中小規模のM&A専門仲介会社を”ブティック”と呼びます。ほとんどのブティックは、東京や大阪などの大都市圏に集中しており、中には少数精鋭ながらM&Aアドバイザーの全員が経験豊富な専門家集団という会社もあります。
(2)強みを生かした「特化型」に着目する
日本全国には、地域の特産品があるように、昔ながらのその地域に根付いた事業というものがあります。これら、その地域の特性を見出し、その事業に特化した案件に強みもつ地域特化型M&A仲介業者もあります。
また、M&Aが活発な介護事業や、飲食事業などに特化した事業特化型M&A仲介会社に依頼するのも良いでしょう。
士業業界、薬局業界など業界特化M&A仲介会社のインタビュー記事はぜひ読んでみてください。
ただし、M&A仲介ビジネスは既に飽和状態になっており、中には実績がないにも関わらずM&Aをやっているかのように見せる会社もありますので、依頼する際は信頼できる会社なのかしっかりと見極めることが大切です。
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まとめ
今回は、M&A業界におけるマンデートの意味や使い方、M&A仲介会社がマンデートを取得した後の業務内容などについて解説してきました。
M&A業界におけるマンデートとは、「仲介契約書」または「業務委託契約書」の意味で用いられます。
M&A仲介会社はマンデート後、主に以下の業務をサポートします。
- M&Aに向けての本格的な戦略策定
- 会社売却・買収の手続き
- 各種契約書の締結
- デューデリジェンスや条件交渉
- クロージング
M&Aは幅広い専門知識や豊富な実務経験が必要となるため、仲介会社と仲介契約を結ぶことで、トラブルを防ぎ円滑な手続きが可能になります。
M&A業務を仲介業者に依頼する場合には、その業者が過去にどのようなM&A案件を行い、どれくらいの案件をこなしたのかなどをきちんとリサーチしなければなりません。
そして、豊富な知識をもつ専門家集団なのかどうか、マンデートを交わすにふさわしい業者なのかどうか、しっかりと見極めることが重要となります。
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