不動産業界のM&A・売却!その特徴とメリット・デメリットを解説!
不動産業界は、短期的には急激な変動はなく安定的な業界と言えますが、長期的には景気動向や金利の影響などさまざまなリスクにさらされていると言えます。小規模個人営業はもちろん、法人であっても、経営を続けていくためには、長期的なリスクに対する方策を取らなければなりません。
そこでM&A、会社売却は有効な手段と言えます。もちろん、しっかりとした戦略のもと、M&Aを実行しなければ失敗というケースも少なくありません。
不動産業界のM&A・売却を検討する際は、業界の現状及び、M&Aの動向を把握しておくことが大切です。
今回は、不動産業界のM&A・会社売却の動向や、そのメリット、デメリットについて解説していきます。
目次
1、不動産業界の特徴
不動産業界には、大きく不動産開発業、不動産仲介業、不動産投資業、不動産管理業に分けられます。
(1)不動産開発業とは
不動産開発とは、マンションやオフィスビルの建設、リゾート開発、商業施設の建設など大規模な建物の造成を主に手がける業種で、「デベロッパー」と呼ばれるものはこれにあたります。
(2)不動産仲介業とは
不動産仲介業は、居住用マンションなどの不動産の購入を望んでいる者と売却を検討している不動産所有者の間を仲介、媒介を行う業種です。
(3)不動産投資業とは
投資不動産を投資家に売却して、投資家は不動産オーナーとして土地や建物を他人に賃貸することで不動産収入を得る業態を言います。
(4)不動産管理業とは
不動産管理業は、不動産オーナーに代わって不動産の入居者を募集し、内見、契約の締結から家賃の収受、不動産のメンテナンスなど、不動産経営に関するあらゆる業務を行う業種です。
不動産オーナーにとって不動産管理会社は大切なビジネスパートナーであり、不動産経営の成否に大きく影響する存在といえます。
2、不動産業界の現状と今後
(1)不動産開発業の現状と今後
建築偽装問題による「建築確認の厳格化」や米国の「サブプライムローン問題」、2008年の「リーマンショック」などの影響で、国内の不動産業界でも倒産に追い込まれる事態が相次ぎました。
近年では、国内の人口減少により、業界自体が縮小していることは否めません。少子高齢化になり物件を買う人の数が減れば、不動産業界の市場規模も小さくなっていくのは当然でしょう。
この状況を打開するためにも、海外進出や業界再編を積極的に進めていく必要があります。そのためにM&Aは有効な手段の1つと言えます。
(2)不動産仲介業、不動産管理業の現状と今後
これらの不動産業は、中小規模の企業が多く、特に中小企業や地方の不動産会社では、「経営者の高齢化」及び「後継者不足」が深刻な問題となっています。後継者不足によって、事業承継が困難なため、やむを得ず廃業というケースも少なくありません。
この点、M&Aを行うことによって、第三者に不動産事業を引き継いでもらうことが出来れば廃業は回避できます。会社を売却し、事業を承継することも選択肢の一つです。
3、不動産法人を売却する、M&Aを行うメリット
(1)売り手側のメリット
売り手側のメリットには、主に以下の3つが挙げられます。
①競合他社とのM&Aで経営を安定させることができる
不動産業は景気の変動を大きく受けるため、同種の企業同士で競合するよりも、お互い手を組むことで、景気変動のリスクを抑えることができ、経営を安定させることができます。
特に中小企業は規模が小さく、資金繰りにいつも悩まされているのが常です。しかし、大手企業とのM&Aにより潤沢な資金が確保され経営の安定化を図ることができます。
また、そこで勤めている従業員にとっても会社が安定することで、安心して働くことができます。
②売却益の獲得
中小企業の場合、自社を売却することによりオーナー社長は多額の売却資金を得ることができます。その資金で借入の返済に充当することもでき、また、新たな事業を始めるための元金にもなり得ます。引退を考えている高齢な社長の場合は、退職金がわりにもなりでしょう。
③競合相手からパートナーへ
M&Aによって今まで競合していた会社が、お互い手を組み、ビジネスパートナーとなります。結果として競合相手を減らすことにつながります。
売り手側・買い手側双方にとって競争相手が減るというのもM&Aのメリットの一つです。
(2)買い手側のメリット
一方、買い手側のメリットには、以下の5つが挙げられます。
①従業員・スタッフの獲得
たとえ大手企業であっても、自社と同じ分野において、豊富な経験を有する従業員を確保・維持することに苦慮しています。
しかし、M&Aを行うことで、経験のある従業員やスタッフをスピーディに確保する事ができ、事業拡大を加速させることができます。
②事業エリアの拡大とともにシナジー効果が期待できる
不動産業界は3つに大別されると上で述べました。同じ不動産業であっても、自社の強みが不動産管理業であった場合、不動産仲介に強い会社を買収することにより、範囲の経済が働き、シナジー効果が期待できます。
③新規事業へスピードを性持って参入できる
M&Aにて自社にないノウハウを買収することによって、スピード性を持って新規事業への算入ができます。
例えば、リゾート開発にはホテル業がつきものです。リゾート開発に強い企業の場合、たとえば、ホテル事業を行う会社を買収することで、新しい技術やノウハウを取り入れることが出来ます。このように周辺の関連産業をうまく取り入れることで、多角化経営が実現できます。
4、不動産業法人を売却する、M&Aを行うデメリット
(1)売り手側のデメリット
売り手側のメリットは主に経営者側のメリットである場合が多いといえます。一方、デメリットとしては、残された従業員や取引先が受ける場合が多いと考えられます。
①自社従業員の不満
最もデメリットを受けるのは従業員と言えます。待遇や勤務地、仕事内容の変更、リストラなど従業員は職場環境の変化に伴い、モチベーションが低下する可能性もあります。
こうした従業員の待遇面については、M&Aを実施する前に従業員へきちんと説明することが必要です。従業員の待遇維持を売却の条件とすることも検討しなければならない場合もあります。
②人員・システムの統合が困難
多くの場合、売り手企業が買い手企業のシステムに合わせることが一般的ではないでしょうか。これまで慣れ親しんだ手続きやルールを半強制的に変更することは、従業員はストレスを感じ、生産性に悪影響を及ぼす可能性もあります。
(2)買い手側のデメリット
①企業文化の融合に時間がかかる
企業は年月を重ねることで独自に成長します。その中で社風などの企業文化が形成されていきます。社風の全く異なる企業同士が統合した場合、企業文化の融合に手間取り、混乱を招く可能性があります。
②買い手による雇用・労働条件の変更、従業員の離職
M&A後に従業員の雇用条件が変更されるケースもあり、従業員がモチベーションを失い、退職するかもしれません。
③取引先との関係が損なわれる
長年にわたって良好な関係を維持してきた取引先との関係も、M&Aによって契約条件の変更や、担当者の変更などで、取引先側で混乱や反発を招き、場合によっては契約打ち切りという可能性もあります。
5、不動産業の売却、M&Aを成功させるポイントは?
不動産業界でのM&Aは盛んに行われていますが、有利なM&Aを実現するには成功ポイントをしっかり押さえておく必要があります。
不動産業界のM&Aにおいて有効となるポイントとして以下の3点があげられます。
- 多くの取引先企業を抱えている
- 地域性を活かした事業を行っている
- 有資格者が多く在籍している
- 企業価値は複数の算出方法で算定する
(1)多くの取引先企業を抱えている
多くの安定的な取引先を抱えている企業を買収すると、買い手側ではM&A後すぐに業績の向上、事業の拡大が見込めます。
例えば管理会社の場合は、多くの物件を管理しているなどが大きなメリットと言えます。
したがって、多くの取引先を持っており、継続的に安定した取引が期待できるケースでは売却価格も高くなりがちです。
(2)地域性を活かした事業を行っている
特に中小の不動産会社など、長年の間、その地域で事業を行い、その土地に特有の情報に詳しい老舗の会社を買収することで、買い手側は既存事業に加えてエリアの拡大を図ることができます。
昨今のM&Aでは、大手企業が事業エリアの拡大を目的に地域性を活かした事業を行う企業を買収する事例が増加し、高値で取引される場合も多くあります。
(3)有資格者が多く在籍している
不動産業界では、従業員の人材不足という問題を抱えています。一方で、必要な人材を新規募集するには、手間とコストがかかります。
そこで、M&Aによって有資格者である従業員を引き継ぐことができれば、人材不足の問題をスピーディに解決することができます。
一般的には、不動産業界では、以下の有資格者が多いほど、有利な条件で売却できる可能性が高まります。
- 宅地建物取引士
- 賃貸不動産経営管理士
- マンション管理士
(4)企業価値は複数の算出方法で算定する
企業価値評価は、M&Aにおいて買収金額を決める際には重要な手続きとなります。
会社価値の算定方法は複数あり、企業の規模や目的に応じて適切な方法を策定し、場合によっては、3つほどの計算方法を活用して、最も妥当な金額を適用するといいでしょう。
企業価値の算定方法について詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
6.売却する前に利用したい!無料査定サイトとは?
売却価格を交渉する時にまずは自社の価値を把握しておく必要があります。その時にオススメしたいのは無料で利用できる「M&Aリサーチ」です。
わずか1分であなたの会社価値を査定できます。これから会社売却を検討されている方はぜひ「M&Aリサーチ」を活用してみてください。
7.会社を売却するときはどこに依頼する?
会社を売却する時はM&A仲介会社に売却を依頼する方がほとんどでしょう。仲介会社の報酬体系に着手金がかかる会社もあれば、最後ご成約する時にのみ成功報酬が発生する会社もあります。コストをおさえたい方は、成功報酬のみの仲介会社である「インテグループ」、「クラリスキャピタル」に問合せしてみるのはいかがでしょうか。
なお、赤字会社、債務超過の会社の売却を検討されている方は、赤字会社でも積極的に対応してくれる「みどり財産コンサルタンツ」に問合せしてみてください。
一方、M&A仲介会社に売却依頼となると、色々と手続きが必要になるため、まだ検討レベルの場合はなかなか相談しにくいと思われている方も少なくないでしょう。
そのような方にオススメしたいのはM&Aのマッチングサイトです。下記にて売手会社はご成約まで全てゼロ円で利用できる3つのサイトをピックアップしましたので、ご興味がある方はぜひ登録してみてください。
(1)スピードM&A
スピードM&Aは、M&A仲介とマッチングサイトの2つのサービスが統合した、新しい形のハイブリッド型M&Aプラッ トフォームです。 オフライン(仲介)とオンライン(マッチングサイト)の相乗効果により、 多面的・多角的な総合支援を行うことで、最適かつスピーディーな事業承継・M&Aをサポートします。
スピードM&Aの特徴としては、規模や業種を問わずあらゆる案件が掲載可能なのと、譲渡価格にして、100万円未満から数億円以上の案件まで幅広く利用することが可能です。
基本的な利用料やご相談は完全無料となっていて、売手会社は最後成約まですべて「0円」と、全くコストをかけずに利用することができますので、【完全無料】買い主様の会員登録はこちらからからご利用ください。買手会社の場合は完全成功報酬型を採用しており、成約時の報酬は成約価格に連動しますが、最低手数料は業界最安水準の「20万円」と、低コスト及び短期間でのM&Aを実現することが可能です。
(2)ビズリーチ・サクシード
ビズリーチ・サクシードは、株式会社ビズリーチが始めた、国内最大級の事業承継M&Aプラットフォームです。会社や事業を売りたい売手会社と、買手会社をオンライン上でマッチングするサービスです。サイト上に売り案件(譲渡案件)は常時2,300案件を掲載しており、買手会社も5,100社登録しています。
ビズリーチ・サクシードは買手会社登録をしないと、売手会社の情報を見ることができないようになっているのも大きな特徴で、完全に情報を非公開で売却したい方には非常にオススメしたいサイトです。また、売手会社はサイト利用からはじめ、最後のご成約まですべて「0円」にて利用することができます。
買手会社は基本ご成約した時に成功報酬が発生し、成約価格の2.0%の手数料がかかりますが、売手会社の情報を無制限に見たい場合は、有料会員登録が必要になります。つまり、ビズリーチ・サクシードには毎月料金を支払って、M&Aを本気に検討されている買手会社が集まっています。そのような会社にアプローチをして欲しい売手会社の方は、ぜひ登録してみてください。
(3)Batonz(バトンズ)
Batonz(バトンズ)は、跡継ぎをすぐに探せるだけでなく、 全国の士業事務所や金融機関が「承継アドバイザー」として交渉をサポートしているのが特徴です。 承継アドバイザーは、累計成約実績4,500件を誇る日本M&Aセンターグループである バトンズが提供するノウハウを受け継ぎ、承継後のリスクを低減した安全な事業承継を実現しています。
バトンズの累計ユーザー登録数28,000人超、累計成約実績数は200件で、 国内の事業承継マッチングサービスでは最大級の会員基盤・成約実績となります。
Batonz(バトンズ)を利用する売手会社は、最後成約まで報酬「0円」で利用することができます。買手会社の場合は最後ご成約した時に成約価格「5%」の報酬が発生します。最低報酬は「25万円」となります。
なお、専門家に支援を依頼する場合は別費用がかかります。こちらに関しては売手会社、買手会社同様です。
また、オプションとして企業評価、不動産評価なども提供しています。
8、不動産業界のM&A実例
(1)「株式会社アジアゲートホールディングス」による「株式会社岩手ホテルアンドリゾート」の買収
2016年6月、「株式会社アジアゲートホールディングス」は、スキーリゾート事業を行う「株式会社岩手ホテルアンドリゾート」を海外投資家と共同出資により全株式を取得し、子会社化としました。
ゴルフ・リゾート事業を行う「株式会社アジアゲートホールディングス」は、「株式会社岩手ホテルアンドリゾート」を買収することで、スキー事業、ホテル事業に進出することになりました。
このM&Aは、両社のそれぞれの強みを生かし、効率的な運営体制を構築する目的で実行されました。
(2)「APAMAN株式会社」による「株式会社プレストサービス」の買収
2019年5月、「APAMAN株式会社」は、賃貸管理業を行っている子会社「Apaman Property株式会社」が、「株式会社プレストサービス」の全株式を取得させることにより子会社化(孫会社化)しました。
「APAMAN株式会社」は、「Sharing Economy」や「Platform」、「Cloud technology」を主要な事業とし、プレストサービス社は、東京、名古屋、大阪、福岡等の主要都市においてサブリース、賃貸管理等を行っていました。
プレストサービス社を子会社化することにより、Platform事業のサブリースや賃貸管理、保険、緊急駆付け、保証、エネルギー等の付帯サービス、及び民泊、シェアサイクル、パー キング等のSharing economy事業の拡大につながることを目的にM&Aを実行しました。
(3)「日本社宅サービス株式会社」による、「株式会社全日総管理」の買収
2017年8月「日本社宅サービス株式会社」は「株式会社全日総管理」を株式交換により完全子会社としました。
「日本社宅サービス株式会社」は社宅のアウトソーシングや引越コンサルティングを事業とし、対する「全日本管理社」は主に賃貸アパート、マンション、事務所、店舗原状回復工事、クロス、床、大工、クリーニングなどを事業として展開していました。
日本社宅サービス株式会社が展開する事業を、「全日本管理者」のサービスが補完することによりトータルサービスが可能となりました。
このM&Aによって、全日総管理社が持つノウハウが、日本社宅サービスの売上増加や収益改善に貢献することになりました。
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当サイトでは無料にて会社売却、経営相談などの対応をさせて頂いています。
赤字会社の売却含め、ご相談いただければと思います。
まとめ
不動産業界では、市場縮小や競争激化による生き残りを図るためM&A案件は増え続けています。
また少子高齢化の影響を受け、事業承継のために会社を売却するM&Aも多く見受けられます。
ただし、当事者だけでM&Aを成功させるのは非常に難しいといえます。信頼できるM&A仲介業者に相談し、経営している不動産会社の課題を見極め、有効な道を探していきましょう。
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