M&A弁護士 | 隼あすか法律事務所 弁護士 多田 光毅

M&Aの取引では、数千万円から億単位と大きなお金が動きます。「最近では取引件数が増えるにつれ取引金額でトラブルになり、紛争も多く起きている」と語っているのは、隼あすか法律事務所の弁護士 多田光毅(ただ こうき)先生です。

今回は、上場企業からはじめ、中小企業のM&A案件も多く取り扱っている多田先生に、M&Aを行う上でリーガルの観点で注意すべきポイントを伺わせて頂きました。

1、活発に動いているM&A業界ですが、これからの業界の動きについてどのようにお考えでしょうか?

以前は、大手企業が事業拡大のためにM&Aをしたり、又は子会社や関連会社の整理や税務メリットを享受するためにM&Aを行なうことが多かったように思います。

しかし、ここ10年くらいで、中小企業の創業者の方が、創業後長年経営をなさってきた企業を、第三者に譲渡するというニーズが増えてきたように思います。

またこういったニーズの変化にあわせて、比較的規模の小さいM&Aの案件を紹介するポータルサイトが増えたり、比較的規模の小さいM&Aの案件を取り扱う専門の業者の方が増えてきたように思います。

2、M&Aの取引件数が増えるにつれ、トラブルも増えているのではないかと思いますが、最近ではどのようなご相談が多いでしょうか?

私は弁護士ですので、紛争に至ったM&Aのケースを扱うこともありますが、以前は、M&Aの買収金額を正面から争うようなことは少なかったように思います。

買収金額を決め、これに対する資金調達のために金融機関がついて、当該M&Aの案件に対して金融機関が資金調達を実行できるようデューデリジェンスをしっかり行ない、買収するということが当たり前でした。

しかし、最近では比較的規模の小さいM&Aが増加しており、自己資金をベースに急いでM&Aを検討する案件が増えているのではないかと推測します。そのため、買収金額そのもので争いになったり、資金調達の実行の部分で争いになったりする案件を実際に見ています

3、中小企業のオーナー社長は会社を売却する際に、リーガルという観点で注意すべきポイントは?

非常に基本的な部分で、リーガルの観点では下記3つのポイントを注意して頂きたいと思います。

  • 会社を売却する、つまり保有株式を譲渡するための法的条件とその充足についてという点
  • 会社の金融機関に対するローンについて、ご自身の連帯保証人としての地位をどうするのかという点
  • 会社の株式の譲渡が完了した後、代表取締役に留まる際のご自身の代表取締役の地位や報酬、権限がどこまで法的に保全されているのかという点

4、M&Aのご実績が豊富な多田先生ですが、今まで最も印象に残っている案件は?

上場企業同士のM&A等で、公表もされたケースはどれも印象に残っていますが、ここでは省略いたします。

中小企業の場合は、例えば、創業者の方が、全く事業承継のための方策をとらないまま、突然お亡くなりになられてしまい、その後に従業員や創業者の相続人の間で大きな紛争に発展し、会社の事業の存続にかかわる事態になってしまったケースが印象に残っています。

5、これからM&Aを検討されている方へのメッセージをください

これからはM&Aは専門の業者や大手企業が行なうだけではなく、中小企業の経営者の方がリタイアや事業の承継を後継者にするための方法として、一般的になるのではないかと推測していますので、もしそういった中小企業の経営者というお立場の方であれば、是非、法的観点から、改めてご自身が創業した会社というものを分析してみてはいかがでしょうか

プロフィール


多田 光毅 弁護士
隼あすか法律事務所

2001年弁護士登録(東京弁護士会)。現在、隼あすか法律事務所エクイティパートナー。

約20年にわたり、企業法務を専門に、弁護士として現場の最前線で業務を行なってきた。具体的には、株式公開買付等M&Aの第三者委員、創業者のエグジットとしてのM&A、不動産ファンドの証券化・流動化、アニメ・コンテンツ配信等のIT企業を代理して、買収・事業譲渡、知的財産権保護のための交渉、各種製造業等の国際取引、労務紛争、破産管財人、国際商事仲裁・訴訟、プロスポーツ選手代理人等であり、実務の運用に詳しい。

多田弁護士への相談フォーム

八木チエ

八木チエM&A INFO プロデューサー

投稿者プロフィール

大学卒業後、7年間IT会社の営業を経験し、弁護士事務所に転職。
弁護士事務所で培った不動産投資の知識を活かし、業界初の不動産投資に特化したメディアを立ち上げ。2018年に株式会社エワルエージェントを設立。不動産投資「Estate Luv」、保険「Insurance Luv」などのメディア運営やメディアのコンサル事業に特化。
M&A業界が盛んになった今、M&Aの情報を正しく伝えたい、もっと多くの人にM&Aの魅力を知ってもらいたいと思い、M&Aに特化したメディア「M&A INFO」を立ち上げ。より有益な情報を多く配信している。

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