企業を評価する上でBSを正しく読むことは欠かせません。BSから現在の経営状況を把握し、課題や今後の方針が決まると言っても過言ではないからです。とはいえ、基本構造を理解すればあとは項目ごとに比較していくだけです。
そこで、BSをどうやって見れば良いのか、またBSからどのように企業評価をできるのか、などについて解説します。
1、BSとは
BSとは、企業の一時点の財政状態を表したものです。漢字で表記すると貸借対照表です。ちなみにBSは決算書の一つで、あとの二つは損益計算書とキャッシュフロー計算書です。この三つで財務三表と呼びます。
2、BSの基本ルール
BSの基本ルールは簡単です。左右に分かれた表があって、原則として左に資産、右に負債と純資産が入ります。そして資産と、負債+純資産の額が同じになる仕組みです。
ただし負債が資産よりも大きくなった場合、純資産は資産と同じ左側に入ります。これはマイナスの純資産、つまり負債ということです。
(1)資産とは
資産とは会社が保有する財産のことです。具体的には、現金、預金、株式、建物、土地、車、商品在庫、設備、債権、などすべてのものが資産に該当します。
(2)負債とは
負債を簡単に言うと借金ですが、お金だけではありません。金銭や物資を借りている場合、負債として計上します。会社の債務という言い方をする場合もありますが、債務と負債は同じものを指しています。貸借対照表上は負債という名称になっています。
(3)純資産とは
純資産とは、純粋な自社の資産という意味です。別の言葉を使うと自己資本です。ここまで踏まえると、資産は負債と純資産から成る、という意味が理解できるかと思います。
負債が資産より大きくなった場合貸借対照表上は資産と同じ左側に純資産が入りますが、これは少し理解しにくい概念かもしれません。数学のマイナスの考え方と同じで、マイナスの純資産ということです。
負債の一部は資産となっていますが、資産を超える負債分は、純粋な会社の負債、つまりマイナスの純資産ということです。純負債というものはないので、マイナスの純資産として表現しています。
3、資産と負債の流動性
資産と負債にはそれぞれ、流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、があります。
(1)流動と固定の違い
資産には流動資産と固定資産があり、負債には流動負債と固定負債があります。では流動と固定で何が違うのかですが、1年以内か、1年を超えるかが基準です。1年以内の資産と負債は流動資産、流動負債、1年を超える資産、負債は固定資産、固定負債となります。
(2)流動比率の見方
貸借対照表を見れば、流動資産と固定資産の割合はどのくらいか、流動負債と固定負債の割合はどのくらいか、といったことがわかります。そして会社の経営状況を把握する上で特に重要なのは、流動資産と流動負債の比率である流動比率です。
なぜ流動比率が重要なのかですが、流動比率は直近のお金の動きそのものだからです。会社によって経営方針が異なるので一概には言えませんが、特に流動負債に対して流動資産が多いことが重要です。
流動負債に対して流動資産が多いということは、少ない負債で大きな資産を生み出したということになります。逆に流動負債が大きく流動資産が少ない場合、多く負債を背負ったのにそれが資産に結び付いていないということです。
4、BSによる企業評価の方法
ここからはモデルケースを元に、BSによる企業評価の方法について解説していきます。
(1)負債と純資産の割合
負債と純資産の割合を比較した際のモデルケースを紹介します。
①負債に対して純資産が多い
貸借対照表上理想的なモデルケースです。負債に対して純資産が多いということは、自己資本が多いということです。つまり資産のうちの多くが自己資本ということなので、事業が安定している、またこのようなモデルケースの企業は今後伸びる確率が高いです。
②純資産よりも負債の方が多い
負債が多い状況は、言わずもがなこれから純資産の割合を増やしていく必要があります。負債の割合が多いということは、事業のために借り入れたお金や物資に対して十分な利益が出ていない状態です。
負債が多いこと自体は一概に悪くはないのですが、それに対して利益を回収できていない状況は企業として危険です。ただし、創業後間もない企業は純資産よりも負債が多いケースが大半です。
なぜなら事業を始めるための出資に対してまだ利益を回収できていないからです。今後純資産の割合を増やせるかどうかで事業の成否が決まると言っても過言ではありません。
③純資産が左側に記載されている
上で説明した通り、純資産が左に記載されているということは資産よりも負債が大きくなっている状態です。事業を一定期間継続しているのに負債が膨らんでいるのなら、大変危険な状況と言えます。
また創業時は純資産に対して負債が大きくなると説明しましたが、それでも創業時の負債は資産になります。つまり負債の方が大きいということは自転車操業のようになっているということです。
債務超過の状況から回復できる場合もありますが、残念ながらそのまま倒産する事例も多いです。
(2)流動資産と流動負債の割合
次に注目すべきポイントは、流動資産と流動負債の割合です。こちらもモデルケースをご紹介します。
①流動負債が流動資産よりも大きい
流動負債が流動資産よりも大きいということは、少なくとも直近の事業成績は赤字の可能性が高いということです。なぜならお金や物資を借りた分よりも利益が確実に少ないということだからです。
ただし創業当初は流動負債の方が大きくなるケースが多いため、そこからいかに流動資産の割合を増やしていけるかが着眼点です。
②流動資産が流動負債よりも大きい
流動資産が流動負債よりも大きいということは、経営が安定しているということです。資金繰りがうまくいっており、投資したお金以上の利益を回収できています。今後より成長する可能性のある企業です。
5、貸借対照表と損益計算書の関係
貸借対照表はバランスシートでBS、損益計算書はプロフィットアンドロスでPLです。なぜ二つあるのか、同じ会社の利益状況などを示すものなら一つにもとめられるのではないか、と誰しも一度は思ったことがあると思います。
私も最初はそう思ったのですが、この二つには明確な違いがあります。まずBSは現時点、もしくは過去時点の会社の資産状況を表すものになります。そのため、よく点、もしくはストックという表現がされます。
一方で、損益計算書は過去期間のお金の動きを表すものです。そのため、線やフローと表現されます。また期間にも違いがあり、貸借対照表は会社設立依頼当然すべての期間のものを含んだ結果です。
しかし損益計算書は1年間限定のものになります。まとめると、貸借対照表は会社設立以降すべての期間を含んだ結果の点、損益計算書は1年間限定のお金の流れを表した線ということです。
抽象的な表現で少しわかりにくいかもしれませんが、実物を見ればわかるかと思います。なぜなら貸借対照表にはその時々の資産や負債の合計が書かれていて、損益計算書は取引等何か発生したときの売上や費用、そして最後に合計が書かれているものだからです。
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赤字会社の売却含め、ご相談いただければと思います。
まとめ
BSは見慣れないうちは読み方がよくわからないかもしれませんが、基本的な読み方がわかれば簡単です。そして見るべきポイントも決まっています。簿記の知識があった方がより全体がわかるのは事実ですが、実際に細かく仕分けたり書類を作成するための知識がなくても読むことは可能です。あとは実際の企業のBSを見ていくといいでしょう。
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