「会社が成長期を迎える前の成長戦略型M&Aを狙うべき」と話しているのは、デューデリジェンスからPMI(ポストマージャーインテグレーション)までワンストップでM&Aをサポートしてくれる、会計事務所を母体とする株式会社コーポレート・アドバイザーズの代表取締役 中村 亨(なかむら とおる)さんです。
今回は中村代表にこの先のM&A業界の見通し、「成長戦略型M&A」の狙い方、コーポレート・アドバイザーズが特徴とする「仕掛け型のM&A」などについて伺いました。これからM&Aを検討されている方、はじめ方がわからない方、悩まれている方はぜひお読みください。
目次
1、M&Aの活用の幅が広がっていく
八木:今、活発になっているM&A業界で、取引件数も増えていると思います。中村代表には、M&A業界がこの先どのようになっていくかお伺いできればと思います。
中村代表:M&Aの活用の幅が広くなっていくでしょう。幅というのは、国内からグローバル、中小企業から大企業だけではなくこれまでのM&Aにおける常識を覆すような、M&Aのマッチングサイトを活用したスモールM&Aも増えていくと思います。
八木:スモールM&Aは、これまでのM&Aとどのように異なるのでしょうか。
中村代表:売り手からすると、今まで、M&Aは秘密保持に始まり秘密保持で終わる、というのが大原則で、極力周りには知られないように水面下で実施するものでした。それが、M&Aのマッチングサイトを利用することで、不特定多数の方に匿名の案件情報が公開され、見る方によっては会社や事業が特定されかねない情報も掲載されるケースも出てくるでしょう。秘密保持の考え方もこれまでよりも緩いものになります。一方で、情報をよりオープンにすることにより、マッチングにかかる時間やコストを下げ、これまでは、M&Aの対象としてはなりづらかった企業や事業に関しても成約することができるようになると思います。
その反面、スモールM&Aでは、我々のようなM&Aのアドバイザーを使わず、売り手と買い手が直接交渉をおこなうケースも出てきており、トラブルや失敗事例も増えることが予想されます。
八木:確かにM&Aの初心者同士が直接交渉をおこなうとトラブルにつながりそうですね。何か解決策はありますでしょうか。
中村代表:取引金額の規模感にもよりますが、やはりできるだけアドバイザーを利用したほうが良いと思います。M&Aのアドバイザーに依頼するメリットは、M&A初心者では想定しづらいリスクの発生確率を下げること以外にも、広いネットワーク(プラットフォームの活用を含む)で相手先を見つけることができることや、専門的なアドバイスを受けることができること、また最大のメリットは売り手、買い手が本業に集中することができることなどが挙げられます。リーズナブルな価格で対応できるアドバイザーも増えてきています。弊社では、スモールM&Aに特化したチームもあり、会計事務所としてM&Aの活用の幅の広がりに対応できる体制を整えています。
2、会社が成長期を迎える前の「成長戦略型M&A」を狙う
中村代表:今は「人生100年時代」と言われています。今までは、65歳ぐらいで会長になって、70歳まで働いて80歳までの10年ぐらい悠々自適に生活ができればいい、という考え方でした。しかし、人生100年時代と言われている今は、引退してからあと30年ぐらいの人生が残っています。つまり、第二の人生を真剣に考えなければいけないのです。
八木:長生きすることで引退してからの人生も長くなりましたね。
中村代表:今まで会社経営を一筋にやってきた経営者たちは、引退後にどうやって世の中と関わって生きるかが、重要な問題になってくる時代になってきます。
あらゆる業界で再編やグローバル化が進み競争が激しくなってきています。社長の年齢が60歳や70歳となるときには、すでに会社の成長期は過ぎてしまっているケースが多く、譲渡するにしてもなかなか難しいのですが、一方、これから成長期を迎える50歳前後で大手企業の傘下に入ることができれば、成長期と世代交代期を一緒に迎える「成長戦略型M&A」を実現することができます。
八木:引退するタイミングでM&Aを検討するのではなく、会社の価値が最も高い成長期を狙ってM&Aをするわけですね。
中村代表:そうです。50代、あるいはもっと早いタイミングでM&Aを検討するケースが増えると思います。これは人材不足の人手不足の時代と相まって、当然経営者不足の時代でもあるので、大手企業の傘下に入れば人材を獲得することができます。一方、譲渡する先の会社では経営者不足というのも十分に考えられますので、そのまま社長をやって下さいと言われるのはよくある話です。
そういう意味ではM&Aも新しい時代に入ってきました。今までは売り手が成長、買い手が維持というのが基本的な組み合わせでしたが、そういった意味では、対極化、多様化してきていると思います。
八木:M&Aを一つの戦略として考えることですね。若手の経営者がM&Aをした実例をご紹介頂けますか?
中村代表:先日、弊社で創業三代目の40代の経営者が同じ業界の大手に会社を譲渡した案件がありました。譲渡後の業績は好調に推移しており、ご本人は非常に良い決断だった、とお話されていました。
この方は創業三代目で同じ業界の大手企業に譲渡したということになりますので、このM&Aは「業界再編型」でもありますが、将来的な事業承継ということにもなりますので、「事業承継型」の要素もあり、また会社の価値が高いタイミングでの譲渡のため、「成長戦略型」でもあります。このように、今後は一つの型にはまらない、色々なタイプのM&Aが出てくることが予想されます。
3、会計事務所を母体とするコーポレート・アドバイザーズならではの3つの特徴
八木:M&A業界が活発になっていく中で、新しく参入してきた企業も多く見受けられます。相談先が増えたのはメリットではありますが、本当に信頼できるか、選ぶことが難しくなるのはデメリットだと考えられます。競合が増えている中で、御社の特徴をぜひ教えて下さい。
中村代表:会計事務所を母体としていることで、まず挙げられる特徴としては「対応の幅の広さと自由さ」と言えます。
弊社グループは会計・税務・労務のプロフェッショナル集団ですから、M&Aの仲介、デューデリジェンス、株価算定はもちろん、会社を譲渡したあとに重要となる経営統合、業務統合、意識統合となるPMI(ポストマージャーインテグレーション)もお手伝いできます。給料計算の会計アウトソーシング、システムの統合、人事規定の統合など幅広く対応することができます。
また、弊社のグループの中にオーナー様の財産サポートを行う会社もありますので、会社を譲渡後のオーナー様の資産管理のアドバイスやサポートもできます。売り手、買い手どちらもM&A後のサポートをさせて頂いております。
ワンストップでの対応もできますし、部分的な対応もできるため、M&Aや事業承継に関することであれば、まずは弊社にご相談いただければお役に立てるかと思います。
八木:会社だけではなく、オーナー様まで「ワンストップ」でサポートして頂けるとのことですね。会社譲渡までのお手伝いできたとしても、PMIまでサポートできる会社は少ないですね。
中村代表:そうです。2つ目の特徴は「豊富なM&A支援実績」です。
最近、会計事務所やコンサルティング会社でM&A支援をメニューに追加するケースが増えてきていますが、弊社では創業時から18年にわたってM&Aに関する業務をおこなっています。M&A仲介・助言業務の累計成約数140件超、デューデリジェンス及び株価算定業務の累計支援数1000件超です。その実績を基に有効的かつ客観的な助⾔をおこなうことができます。
八木:豊富な実績をお持ちなのですね。やはり、依頼する側としては、実績・事例に基づき助言をしてもらえるかどうか、ということが重要になるそうですね。
中村代表:3つ目の特徴は「仕掛け型のM&A」です。
弊社の場合、売り手から相談受けてというよりかは、買い手と契約をして、譲渡を決断している売り手を探すのではなく、買い手の買収条件に該当する会社をリストアップして、アプローチしていきます。
実は弊社は「仕掛け型のM&A」が主流で、弊社の成約実績の9割以上を占めています。
八木:御社から「会社を売ってみませんか?」みたいな形でアプローチするのですか?
中村代表: はい、そうです。このアプローチをさせていただく時に、もともと売るという決断されてない方ですので、譲渡した後に自分はどうなるのかなどそういった譲渡の後が非常に気になる部分です。アプローチをしていただく際に譲渡後のイメージなど重点的に説明させて頂いています。これもお話がうまく進む一つの要因だと思います。
八木:全く譲渡を考えていない会社に売ってくださいの交渉をするのですね。納得するまでの交渉にはノウハウがないとなかなかできないでしょう。
中村代表:紹介型で金融機関とかコンサル会社から月に50件100件の提案を受けるような企業なら、そのなかから選べばいいですが、数件、十数件件しか上がってない企業だと自分たちから探しに行かないといけないし、本当に欲しいものを買わないと意味がないですよね。自社にとって買収することによってシナジー効果が得られない会社の買収はすべきではないので、戦略から考えると「仕掛け型M&A」はおすすめです。
八木:きちんと買収する目的を明確せずに買収して、失敗するケースも多く出ていますよね。
4、M&Aはまず専門家へのドアノックが大事
八木: M&Aに興味はあるものの、本当にM&Aをしていいのかどうかと悩まれている方も多いと思います。特に若手の経営者でIPOを考えている方で、IPOとM&Aで悩まれている方も少なくないでしょう。そのように悩まれている方にぜひメッセージをお願いいします。
中村代表:いつでも引き返すつもりでまずドアノックすることでしょう。
M&Aは始まってしまうと相手が出てきたりすると断りにくくなるものです。特に着手金とか払うと尚更です。いつでも引き返すという気持ちを持ちながら進めてみて、そうしないと本気で考えられないと思います。
八木:まずは始めてみることが大事なのですね。
中村代表:それから、相談しやすいアドバイザーを周りに置くことです。買い手となる会社が出てきた時に、いい状態でお話が進められるように準備をしておくことは大事だと思います。
最近はよく出てきているのは、5億とか10億規模のM&Aはほぼ金額で100%決まりますが、20億とか超えてくると意外にお金じゃないところで決まることが多いです。
八木:金額ではない他の条件でしょうか?
中村代表:特に年齢が若い経営者の場合は、会社を譲渡した後に自分がどうなるのかに対する関心が強いです。
私が先日関与した案件では、ファンドの方が低い値段で一般事業者の方が高い値段を提示していたのですが、その時の経営者は提示金額が低いファンドを選びました。理由としては、ファンドは経営に口出しをしないので、自分の居場所を確保するためというのが決め手でした。
八木:自分の居場所を確保したかったのですね。
中村代表:逆もありました。ファンドは高い値段を提示して、事業会社の方は安いのに事業会社に譲渡しました。その理由はファンドからあと5年ぐらい社長をやって欲しいという条件をつけられたからです。その経営者はすぐ辞めたかったので、事業会社を選びました。
つまり、20億ぐらい超えてくると自分のその後の生き方に合うかどうかが重要になってきます。そういう考え方を持っているだけだと進まないので、やはり話を始めてみる、相談してみる、ドアノックしてみる、実際に行動を起こすことによってやっとリアリティが分かって、そこで初めて自分がしたいことを気づくのです。
そういった意味では、相談してみることは一つのきっかけとなります。たとえ着手金を払って、結局譲渡をしなかったとしても、自分の本当の気持ちに気づけば着手金はけして高くないものかもしれないですね。
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