M&A案件の中で、最も成約数が多いのはIT業界だと言われています。レコフデータによりますと、2018年はM&Aの成約件数が3,850件に対して、なんとIT業界は8年連続増加の1,000件以上と、史上最多の成約件数を記録しました。
一つの業種だけで成約件数が1,000件以上に達したのは、日本として初めてのことで、それほどIT業界のM&Aが活発しているのは明白なことです。
では、
- なぜIT企業のM&Aがここまで盛んになったのか
- これから業界的にはどのように変わっていくのか
AI、IoTなど変化目まぐるしいIT業界は、IT人材が不足している中で、売手にとっては様々な企業と交渉できる環境にありながら
- どのように自分の会社を売るべきか
- いいIT企業をどうやって買収ができるのか
など、これからIT企業のM&Aを検討されている方に、成功できるM&Aのポイントをまとめました。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1、なぜIT業界のM&Aが盛んなの?その背景は?
まず最初に、日本のM&A成約実績の記録を作ったIT業界は、なぜM&Aが盛んになった背景についてみてみましょう。
大きく下記4つの理由が挙げられます。
- (1)デジタル化など新しい技術導入により需要が高まった
- (2)好景気により資金調達しやすい
- (3)業界再編による不安
- (4)人材不足により下請け業者の売却件数増加
では、それぞれについてみてみましょう。
(1)クラウドなど新しい技術導入により需要が高まった
様々な業界においてどんどんクラウド化を進んでいます。AI、IoT、ビッグデータなど新しい技術に注目を浴びています。
そんな中で、今までIT会社にアウトソーシングしていた会社は、自社内でIT部門を構えるなど体制に切り替えていく会社が増えました。
そのため、IT企業の買収を検討される会社が増え、M&Aの取引実績が増えました。
(2)好景気により資金調達しやすい
国内の上場企業の内部保留金額が最高となるほど業界は好景気です。業界の景気がいいと、金融機関はM&Aに対する融資も非常に積極的に行っているわけですから、企業を買収する資金も確保しやすいと言えます。
(3)業界再編による不安
一方、売手会社はどうでしょう。
三菱UFJ銀行、みずほ銀行などの金融機関のクラウド化から始め、日本通運など国内で様々な業種においてクラウド化の需要が顕著になっています。
その中で、IT業界の稼ぎ頭となるシステム構築、スクラッチ開発、その後のシステム保守の需要がどんどん縮小され、このような業界再編に不安を感じ、今のうちに会社を売却したいと考えている経営者が増え、売却案件が一気に増えたのです。
(4)人材不足により下請け業者の売却件数増加
経済産業省の調査では、2015年の時点ですでに17万人の人材不足していると言われており、2030年には約59万人まで不足するとの試算が出ていて、業界において人材不足は非常に深刻な状況に進んでいると言えます。
その中で、元請けから2次請け、3次請け、4次請けとどんどん下請けさせていくという仕事のピラミッド型になっているIT業界にとっては、中小企業は人材の採用は非常に厳しい状況に置かれています。採用難に直面しているIT企業の売却案件が増えたのも、IT業界のM&Aを活発にさせた一つの背景と言えるでしょう。
2、売手市場?売却先の選択肢が多い
上記にも書きましたが、クラウド、デジタル化など新しい技術を取り入れることによって、今まで外部のIT企業にアウトソーシングしていた会社は、今は自社内にIT部門を構えると流れが変わってきました。
上記影響を受け、IT会社の売却先はIT業界に限らず、様々な業界にとって需要があると言えます。従って、売手会社からにしたら、売却先の選択肢が多く売手市場と言えます。
3、IT業界特有?直M&Aが多い?
業界特有とも言えますが、IT業界は独自のコミュニティーがあり、情報交換を盛んに行っていることによって、実際に買手と売手同士が直接にM&Aを行っていて、仲介会社など使われていないケースも多くあるようです。
M&A仲介会社などを通さずに直でM&Aを行っているので、実にいい売却案件が出回っていないという傾向もあると言えるでしょう。
4、売手がM&Aの狙いは?
IT業界の売手会社はM&Aで何を狙っているのでしょうか。
(1)技術開発のための資金集めによるM&A
上記にも書きましたが、IT業界はクラウド、AI、IoT、ビッグデータなどどんどん新しい技術が進んでいます。
その中で生き延びていくためには、新しい技術の開発が必須になってきます。新しい技術の開発にはもちろんのことで開発費用が必要です。1社独自で資金調達をされている会社もいますが、M&Aを活用して開発費用を集める会社も増えました。
また、大手企業の傘下に入ることによって、資金だけではなく、人材、販売経路など様々なシナジー効果を享受することもできます。
(2)多重下請けから脱却するためのM&A
IT業界は、2次請け、3次請け、4次請けとピラミッド型に多重下請けの業界になっています。
今までのシステム開発などの大型案件は、クラウドなど新しい技術を取り入れることによって、下請け業者の仕事がどんどん減っていき、多重下請けから脱却するためM&Aを活用した会社も多くいます。
5、買手がM&Aの狙いは?
一方、買手はIT会社を買収するメリットはどこにあるのでしょうか?
(1)技術獲得するためのM&A
1つ目のメリットは技術の獲得です。
冒頭にも書きましたが、ITに関しては今まで外部へのアウトソーシングを、社内に技術を確保することによって、コスト削減、人材確保もできると様々なメリットをもたらすことができます。
(2)人材不足を解消するためのM&A
IT業界は、2015年の時点ですでに17万人が不足していると言われていて、2030年には約59万人まで不足すると予測されています。
つまり、IT業界はかなりの採用難と言える業界です。
その中で、採用にコストや時間をかけるよりは、M&AにてIT会社を買収したほうが、一気に人材不足を解消することができると言えます。
6、IT業界に詳しいMAアドバイザリー少ない?相談先の選び方
M&A業界は高い専門知識を要する業界です。従って、MAアドバイザリーは業界特化にて担当している方も多いです。
M&Aの成約実績が最も多いIT業界であるにも関わらず、実はIT業界に詳しいMAアドバイザリーが少ないそうです。
従って、M&Aを検討する際に、IT業界の成約実績が豊富な仲介会社に相談されるといいでしょう。
以下にてIT企業の成約実績が多い仲介会社を3社ピックアップしましたので、参考にしてみてください。
(1)インテグループ株式会社
URL:https://www.integroup.jp/it/
(2)株式会社ウィルゲート
7、M&Aの前に!まずは会社の価値を知る
実際の成約価格は、具体的な交渉により決まるものですが、会社の概算価値を事前に把握しておきたいものです。
「M&Aリサーチ」は匿名で無料にて気軽に利用できる、会社の売却価格を査定できるサイトです。会計事務所が運営しているからこそ、第三者という立場で会社の価値を算出します。
とりあえず会社の概算価値を知りたい方は、ぜひ利用してみてください。
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まとめ
今回はIT業界のM&Aについて書きましたが、参考になりましたでしょうか。
IT業界同士のM&Aに限らず、様々な業界から買収ニーズが高いIT会社だからこそ、売手会社は慎重に買手を選ぶべきで、買手会社は買収競争が激しいからと言って、焦って買収するのではなく、きちんと買収先を厳選することが大切と言えます。
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