時には数十億円、数百億円という大きなお金が動くM&Aの世界。その分、お金にまつわるトラブルが残念ながら多々発生しています。M&Aの失敗、訴訟などの骨肉の争いを避けるにはどうすればよいのでしょうか。
今回は10年以上M&Aアドバイザーとして多くの案件を成功に導いてきた、株式会社クラリスキャピタルの牧野代表が目にした、お金にまつわるトラブルの事例を6つご紹介します。
目次
1、売手会社のオーナー社長が売却した会社のお金を使い込んで海外逃亡
こちらのケースは、売手会社のオーナーが会社売却後に会社のお金を横領し、「買手会社」が被害を受けたトラブルです。
会社を売却後、元のオーナー社長が法人名義のクレジットカードを持ち出して、売却したあとにも関わらず、多額の使い込みをして、海外逃亡。買手会社としては、海外にいかれては、横領されたお金を回収するのにも一苦労です。
クロージングの際はすべての通帳・銀行カード・実印、会社クレジットカードを引き渡してもらい、その後の保管を慎重に行うようにしましょう。
2、M&Aアドバイザーが重大事項を隠して、M&A成立、その後買った会社が即時破産
こちらのケースは、M&Aアドバイザーが売手会社の悪い情報を隠したままで成約。その後、会社が倒産し「買手会社」が被害を受けたトラブルです。
売手企業はM&Aの交渉期間中に、資金繰りが厳しく、ショートしそうな状況であることをM&Aアドバイザーに正直に話しました。しかし、M&Aアドバイザーはそれを話すと破談になることを懸念して、その事実を買手会社に隠し、そのままM&Aが成立しました。
結果、M&Aが成立した直後に、資金ショートでその会社は破産しました。
売手会社・買手会社の情報を隠さずに伝えることがM&Aアドバイザーとして当然のあるべき姿ですが、成約をさせたい(=成功報酬がはいってくる)ために、重要な事実を隠したM&Aアドバイザーも存在しています。M&Aアドバイザー選びは慎重に行いましょう。
3、高額で売れると言われて、多額の着手金を支払ったが…
こちらのケースは、M&A仲介会社による高額査定を信じて、着手金を支払って、依頼したが、一向に売却活動が進まないという、「売手会社」が被害を受けたトラブルです。
売手会社はあるM&A仲介会社に会社売却の相談に行ったら、「●億円で売れますよ!」と言われ、社長は「そんなにうちの会社は評価されるのか」と嬉しくなり、そのM&A仲介会社に数百万円の着手金を支払って会社売却のコンサルティングを依頼しました。
しかし、お相手(買手会社)は一向にみつからず、M&A仲介会社が、本当に動いてくれているかがわからないまま、半年が経った時に弊社にご相談にいらっしゃいました。
私が会社査定をしたところ、到底、そのような金額で売れるような状況ではありませんでした。そのM&A仲介会社は着手金が欲しいために、故意に査定価格を高く出して売る気にさせた可能性がありました。
会社売却をご依頼される際には、M&A仲介会社は1社に限らず何社か回って、いくらで売れそうかM&A仲介会社が考える相場なども聞いて、どこに依頼するか決めることが非常に重要です。
4、資料開示に高額の料金を支払ったが…
こちらのケースは、買手候補会社が情報開示を受ける段階で不当にM&A仲介会社から代金を請求され、被害を受けた「買手会社」のトラブルです。
買手候補会社は買収対象となる売手会社は本当に買収する価値がある会社なのかどうかを検討するにあたって、その判断をするための非常に初歩的な情報開示を依頼したところ、数十万円が必要だとM&A仲介会社から言われました。
買手候補会社はある基礎的条件を満たしているかどうかさえ分かれば、検討の有無が決定すると伝えたところ、担当のM&Aアドバイザーからその条件を満たしていると言われました。そこで、数十万円を支払ったのですが、実際に渡された資料を確認したら、対象会社はその基礎的条件を満たしていませんでした。
その買手候補会社はM&A仲介会社にクレームして、数十万円を返金してもらったそうです。もちろん、そのM&A仲介会社はその買手候補会社から出禁になったそうです。
M&A仲介会社には弊社のような完全成功報酬の会社から、着手金、中間金を要する会社もあります。自分の会社の状況等に応じて、M&A仲介会社を選ぶようにしましょう。
5、売手会社がM&Aアドバイザーに支払う報酬が惜しくなって、不払い。訴訟で全面敗訴
こちらのケースは「売手会社」の契約違反によるトラブルです。
売手会社はM&Aが成功したにもかかわらず、多額の現金が手元にはいり、独り占めしたくなったのでしょうか、実際には瑕疵はなかったにもかかわらず、M&Aアドバイザーに言いがかりをつけて、成功報酬の支払いを拒否しました。
M&Aアドバイザーは訴訟を提起。売手会社は訴訟で全面敗訴しました。結果、アドバイザーの弁護士費用まで負担することになり、より多くのお金がでていくことになりました。
自分の会社のために一生懸命働いてくれた、M&Aアドバイザーに感謝の気持ちを込めてちゃんと報酬を支払い、締結した契約を守りましょう。
6、売手会社がついた嘘がばれて、M&A後に訴訟に発展
こちらのケースは、「売手会社」が重要な情報を隠したままに会社を売却し、その後発覚し訴訟になったトラブルです。
売手会社がある法律に違反したままで営業していたことをオーナー社長は隠して会社を売却。M&A後に発覚し、買手会社は売手会社に対して、損害賠償と詐欺で訴えることになりました。
このような訴訟になると、売手会社はご自身のキャリアに傷がつくことになり、会社にとっても非常に大きな損失を被ることになります。買手会社をだまして会社を売却しても必ずばれます。目先の利益ではなく、長期的な利益を考えて、お互いのために、誠実なM&Aの取引をしましょう。
まとめ
今回はM&Aにまつわる実際に起きたトラブルについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
紛争に発展し、訴訟などで弁護士費用、時間がかかるのは売手会社、買手会社にとってもマイナスですから、慎重にM&Aのお相手・M&Aアドバイザーを選んで、契約書の中身をしっかりチェックしましょう。
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