「若手の経営者が起業して、会社を発展させるには自力でもいいし、VCから資金を集めてIPOをするのもいい。ですがM&Aをうまく活用し、大企業の経営資源を活用することで会社を成長させることもぜひ一つの戦略として活用して頂きたいです。」と話しているのは東証一部上場、M&A仲介会社株式会社ストライクの荒井邦彦(あらい くにひこ)代表です。
20年以上M&A業界にいる荒井代表だからこそ知るM&A業界の最新の動き、これをやったら失敗しないポイントなどについて伺わせて頂きました。
目次
- 1、取引件数が順調に伸びているM&A業界ですが、業界の動きについてどのようにお考えでしょうか?
- 2、財務、法務、税務など様々な分野と、非常に高い専門性を求むM&A業界ですが、業界が活発になったことによって多くの会社が参入してきたイメージがありますが、荒井代表はどのようなご見解でしょうか?
- 3、大金が動くM&A業界だからこそ失敗はできません。経験が非常に豊富な荒井代表から失敗しないポイントをぜひ教えて頂きたいです。
- 4、様々な目的でM&Aを活用するケースが増えていると思いますが、実際に御社の取引の中でどのようなケースが増えているのでしょうか?
- 5、今まで数多くの案件を携わってきた荒井社長ですが、最も印象に残っている案件は?
- 6、今は売り手市場という見方をされている方が多いですが、M&Aのタイミングについて荒井社長はどのようにお考えでしょうか?
1、取引件数が順調に伸びているM&A業界ですが、業界の動きについてどのようにお考えでしょうか?
企業間の競争が激しくなってきた中で、大企業・中小企業とも成長戦略の1つとしてM&Aを検討しています。会社を売却する背景には事業ポートフォリオの見直し、事業再生、後継者不在などの理由が挙げられます。
特に、事業承継で引き継ぐ相手がいないことから困っている中小企業は多く、その解決方法の1つとしてM&Aを検討されている経営者が増えています。
最近ではM&Aに対する税制優遇政策が報じられました。M&Aは企業の一般的な戦略となっており、これからも取引が増えていくでしょう。
2、財務、法務、税務など様々な分野と、非常に高い専門性を求むM&A業界ですが、業界が活発になったことによって多くの会社が参入してきたイメージがありますが、荒井代表はどのようなご見解でしょうか?
M&A仲介業務は高度な専門知識を求められる仕事であり、顧客の経営戦略やビジネスそのものに対して理解する必要があります。M&Aが活発になった今は、収益性が高いから、儲かりそうだからなどと軽い考えで、この業界に参入する企業が増えているのは事実です。
しかし、かかわる人間の能力が高くないと、M&Aを通じて会社の生産性を高められるかを見極めることができません。M&Aが万が一失敗すれば、会社が倒産に追い込まれるケースもあります。
一方、M&Aを成功させることができれば、会社の生産性が高まり、働く社員の給与も増え、顧客は良い商品がリーズナブルに買えるようになり、投資家も利益を得ることができ、世の中に良い影響を与えることができます。そのような形で社会に付加価値を還元していくから我々のような仲介会社は利益が得られる仕組みになっています。
3、大金が動くM&A業界だからこそ失敗はできません。経験が非常に豊富な荒井代表から失敗しないポイントをぜひ教えて頂きたいです。
これをやったら必ずM&Aが成功する方法はありません。我々の業界ではM&Aを「結婚」に例えることがありますが、元々異なる会社同士がいわば「結婚」するわけですから、お互いの会社にはそれぞれ文化、個性があります。
これをやったら必ず成功するというのはないですが、これをやったら失敗しないというポイントがあります。それは、「相手の文化を尊重する」ことです。
M&Aを実施することによって、売り手の会社も買い手の会社もお互いに足りてない経営資源を補うことになります。売り手は買い手のリソース(資源)を十分に活用する、買い手は売り手の人材を活用するなどお互いに補う、お互いの強みを共有し合うことが非常に重要です。
4、様々な目的でM&Aを活用するケースが増えていると思いますが、実際に御社の取引の中でどのようなケースが増えているのでしょうか?
M&Aの手法に関してはそれほど大きな変化はないです。弊社は全体の取引のうち、事業承継によるM&Aは6割を占めています。
今の会社をそのまま続けるための後継者探し、会社を存続させることを重視したM&Aを活用しています。昔はお子さんなど親族に承継させたいのが主流でしたが、今では弊社に直接問い合わせを頂いていたり、ご相談されるタイミングで既に会社売却を決意されていたりする経営者がほとんどです。
5、今まで数多くの案件を携わってきた荒井社長ですが、最も印象に残っている案件は?
最近の事例で言うと、36歳の若手経営者が銀行に会社を売却したM&A案件が印象に残っています。
会社設立5年間で社員数200人となり、次の成長を考えたときに銀行の子会社となる決断をされました。一方の大企業では組織風土から、新しい事業を生み出すことはなかなか難しいケースが多く、このように外から新しい風を取り入れることによってイノベーションする必要があるのです。銀行という伝統的な組織でも今回の案件にように変わっていく必要があるではないかと思います。
若手の経営者が起業して、会社を発展させるには自力でもいいし、VCから資金を集めてIPOをするのもいい。ですがM&Aをうまく活用し、大企業の経営資源を活用することで会社を成長させることもぜひ一つの戦略として活用して頂きたいです。
6、今は売り手市場という見方をされている方が多いですが、M&Aのタイミングについて荒井社長はどのようにお考えでしょうか?
M&Aのタイミングとしていつが適切かという問いに対しては一般的な通説はありません。5年後に株価が上がっているか下がっているか、先のことは誰にも予測できません。だとすれば経営者自身が納得できるタイミングが一番適切な時機だといえます。つまりM&Aのタイミングとして適切な時期は個々の企業、個々の経営者によってそれぞれまちまちだということです。
高いから買わない、安いから売らない、という単純なものではないのです。
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