2021年12月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比4件減の74件となり、2カ月連続で前年を下回った。前月(11月)比では3件減った。1~12月累計では877件と前年比28件の大幅増で、2年ぶりのプラスに転じるとともに、2008年のリーマン・ショック(870件)後の最多となった。
12月の取引金額は1,416億円。100億円を超える大型案件が3件にとどまったことから、7月(488億円)に次ぐ低水準に。年間金額は8兆7121億円と前年を約2兆4,500億円下回った。
上場企業に義務づけられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&Aについて、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。
12月の金額首位は約600億円を投じて、ロシア最大級の林産企業を傘下に置く持ち株会社ロシア・フォレスト・プロダクツ(RFP、英領バージン諸島)を買収する飯田グループホールディングスの案件。株式譲渡と第三者割当増資引き受けで株式75%を取得する。木材の安定的な調達体制を確立し、戸建分譲住宅事業の競争力を高めるのが狙いだ。
飯田グループは戸建分譲住宅で約3割の国内販売シェアを持つ業界最大手で、年間に4万6,000戸以上を供給する。RFPはロシア極東のハバロフスク地方に約400万ヘクタール(九州の1.08倍)の林区を持つ。
12月は金額非公表ながら、注目される売却案件が少なくなかった。その一つは東急不動産ホールディングスによる傘下の生活雑貨大手、東急ハンズ(東京都新宿区)の売却発表。売却先はホームセンター最大手のカインズ(埼玉県本庄市)。カインズは地方の大型店を主力とし、都市型店舗の東急ハンズとの補完性を見込んでいる。
オリックスはクラウド会計ソフト「弥生シリーズ」で知られる弥生(東京都千代田区)を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却することを決めた。売却額は2,500億円程度とみられる。オリックスが投資事業の一環として弥生を買収したのは2014年。投資資金を回収するイグジット(出口)の段階と判断したようだ。
オリンパスは生物顕微鏡、工業用顕微鏡など祖業の「科学事業」の売却を検討すると発表した。科学事業の直近売上高は958億円とそれなりの規模。同社は内視鏡と治療機器を中心とする医療分野に経営資源を集中させる方針に基づき、2020年にはデジタルカメラなどの映像事業を手放した。
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