中小企業では、約7割の企業は事業承継に後継者がいないという深刻な問題を抱えています。
中には後継者がいないなどの理由から、せっかく育てた会社を廃業した方も少なくありません。
こちらの記事では、今の中小企業が抱えている事業承継問題とその解決策について書いていきます。事業承継で問題を抱えている中小企業の方は、ぜひ読んでみてください。
1、中小企業の現状について
まず最初に、中小企業の現状についてみてみましょう。
(1)経営者はどんどん高齢化していく
下記中小企業白書を見ていただければわかりますが、1995年の経営者の年齢がもっとも多い「45〜49歳」に対して、2015年では経営者の年齢が最も多いのはなんと「65〜70歳」となり、15歳も高齢化になっていることがわかります。
出典:中小企業白書
(2)事業承継に問題と感じている経営者6割超え
下記東京商工会議所が実施した「事業承継に関するアンケート調査」では、最も事業承継を検討されている60代以上の現経営者は、「事業承継に障害・課題と感じている方」は、7割も超えているにもかかわらず、実際に準備・対策を行っている方は、なんとわずか2割に止まっていることがわかります。
いかに事業承継問題の深刻化が伝わってくるデータと言えます。
2、中小企業が抱えている事業承継問題7つ
では、中小企業にはどのような事業承継問題を抱えているのでしょうか。
以下にて具体的に書いていきます。
(1)後継者がいない
まず最初に挙げられるのは「後継者がいない」の問題です。
- 子どもには事業を承継する意思がない
- 子どもには承継する意思はあるけど、経営者の素質がない
- 現経営者のカリスマ性には勝てない
など様々な理由から、後継者が見つからないのです。
(2)後継者を育つのが難しい
事業承継はただ単純に会社の社長を譲るだけでできるほど、簡単なことではありません。
子どもに引き継いで欲しいときは、まず仕事について覚えてもらう必要があります。ただ、仕事を覚えただけではなく、会社の経営、マネジメント能力も育てていく必要がありますので、順調に進めることができればいいのですが、なかなかそう順調に育たないケースが多いです。
(3)事業承継に期間が長い
一般的には後継者を育って始めてから会社を継がせるまで、大体10年前後かかると言われています。
その理由は上記にも書きましたように、後継者を育てるのは非常に難しいからです。スムーズにスキルアップしていけばいいのですが、過程のうちにうまくいかないことも想定されますので、事業承継をしたい時期から逆算してスタートする必要があると言えるでしょう。
(4)事業承継をした時の税金問題
事業承継をする時の承継方法にもよりますが、現経営者が生きているうちに承継する場合、贈与の扱いとなり贈与税がかかります。
一方、相続で承継した場合相続税がかかります。どっちにしても税金を納める必要があり、会社の評価が高ければ高いほど税金も高くなりますので、税金を支払うことが難しく承継できないケースも多く発生しています。
(5)社員など不満が出る問題
今までほとんど働いたこともない自分の子どもに、いきなり会社を承継させるのは、社員から不満が出ることも大きな問題と言えます。
経営者は会社の事業を熟知した上に、リーダーシップも必要です。一緒に従事していて、その能力に社員が認められたのならいいのですが、ただ自分の子どもだからという理由で会社を継がせると、優秀な社員が辞めてしまうなど、会社の業績にも大きく影響が出るリスクがあります。
(6)事業の将来性に対する不安
会社を立ち上げた頃には市場がある事業でも、数十年も経った今将来性があまりないという可能性もあるでしょう。
会社を継がせたのはいいものの、倒産のリスクが大きい中ではなかなか難しいでしょう。
(7)廃業会社が増えている
後継者がいないなどの理由から、会社を廃業にする経営者も多くいます。
会社を廃業させるには、借り入れなどの負債を全て完済しないといけないなど、実は会社を廃業することは意外と難しいのです。
逆に言えば、廃業ができる会社はいい会社とも言えますので、廃業させるのは非常に勿体無いのです。
3、事業承継問題を解決する5つの解決策
会社の状況によって、事業承継に対して様々な問題を抱えているでしょう。
では、事業承継問題にはどのような解決策があるのでしょうか?以下にて5つの解決策をご紹介します。
(1)後継者を育つ計画を立てる
上記にも書きましたが、後継者を育てるのは決して簡単なことではありません。
後継者を育てるには大体10年前後かかると言われていますので、それを一つの目安に事業承継をするタイミングから逆算して、きちんと計画を立てて後継者を育てることが非常に重要と言えます。
明確に後継者を決めてから、その方の得意不得意に合わせて、計画を立てるようにしましょう。
(2)事業の立て直し
後継者がいたとしても、事業の将来性に不安があったら、このまま会社を継がせるわけにはいきません。
会社を引き継ぐよりも、先に採算が取れてない事業を中止したり、新しい事業を買収したりなど、会社の収益を確保できる事業の柱を立て直すことが重要です。
なお、事業の立て直しの施策として、M&Aを活用して事業や会社を買収することも挙げられます。
(3)事業承継補助金、事業承継税制を活用する
事業承継税制は、円滑な事業承継を税金面からサポートする目的で、贈与、相続税を猶予または免除する制度として作られました。
事業承継税制を適用するには、様々な要件が設けられていますので、詳しくは事業承継税制の記事を参照にしてみてください。
なお、手続きなどは非常に煩雑になっているようで、専門家に問合せすることオススメします。
(4)MBOによる承継
会社の事業内容に熟知していて、社員から反発もされにくい、優秀な役員に会社を承継してもらうという選択肢もあります。
会社の幹部が承継する場合、マネジメント・バイアウト(MBO)と言います。
MBOによる事業承継をする場合、短期間にてスムーズに承継してもらえるというメリットがある反面、この場合は会社を買うことになりますので、そのファイナンスの準備が難しいというのがデメリットです。
MBOのファイナンスの解決方法について詳しくは会社を売りたい場合の記事を参照にしてみてください。
(5)M&Aによる外部承継
M&Aを活用して、会社を売却することも一つの解決策と言えます。
2019年2月19日に衆議院調査局経済産業調査室が実施した「最近の企業動向等に関する実態調査」にデータでは、事業承継において5割以上の会社が前向きな姿勢を見せています。
出典:衆議院調査局経済産業調査室「最近の企業動向等に関する実態調査」
M&Aにて会社の売却ができれば、
- 経営者には売却益を得ることができる
- 社員が安定する
などのメリットがある反面、M&Aの成功率はわずか3〜5割しかないため、満足のできる売却をするには、実績がある信頼できるM&A仲介会社に依頼することが大切です。
M&Aの流れ、信頼できる仲介会社の選び方などについて詳しくはM&Aの記事を参照にしてみてください。
なお、会社の売却を検討されている場合、まずは会社の価値を把握しておくことが大切です。下記匿名で利用できる「M&Aリサーチ」は、わずか1分であなたの会社の概算価値を算出することができますので、まずは会社の価値を知っておきたい方にオススメします。
M&Aリサーチ
4、事業承継問題の相談先は?
実際に自分の会社の状況に合わせて、事業承継問題の相談をしたいですが、どこに相談したらいいかわからないと悩まれている方も多いでしょう。
以下の相談先をピックアップしましたので、参考にしてみてください。
- 税務について相談したいなら「公認会計士・税理士」
- 法務について相談したいなら「弁護士」
- 事業承継全般について相談したいなら「M&A会社などアドバイザリー」
相談先の選び方について詳しくは相談先の記事を参照にしてみてください。
5、セミナーにて情報収集
初めての事業承継で問題だらけ、知らないことだらけで、何から始めたらいいのかがわからない方も多いでしょう。
その場合、セミナーにて情報収集することオススメします。定期的にセミナーを開催しているところが少なく、下記3つのセミナーをピックアップしました。
(1)「スムーズに事業承継したい経営者のための基礎知識」セミナー
URL:https://enside.link/business-succession-seminar/
こちらのセミナーは、エンサイドコンサルティング株式会社の主催です。エンサイドコンサルティング株式会社は、会計事務所、税理士法人、社労士法人と士業の専門集団です。
M&Aの豊富実績を活用し、M&Aの実務、税金などをテーマとしたセミナーを定期的に開催しています。
事業承継の入門セミナーになっており、事業承継を検討されている方は参加してみるといいでしょう。
(2)事例で学ぶ!失敗しない事業承継〜経営者が押さえておくべきポイント〜
URL:https://www.tokyo-kosha.or.jp/topics/1905/0001.html
こちらのセミナーは、東京都中小企業振興公社が主催しています。
事例を交えながら、実際に事業承継をする時に経営者が押さえておくべきポイントを教えてくれますので、参考になるお話しが聞けるでしょう。
(3)会社を子供に渡す!悲劇を回避する3つの鉄則
URL:https://www.attax.co.jp/seminar/detail/729
こちらのセミナーは、アタックスグループが主催会社です。
事業承継をする際に、税金、会社法と民法などの法律にも絡んでおり、その最低限に押さえておくべき3つの鉄則を教えてくれます。
事業承継の基礎知識を得たい方にオススメしたいセミナーです。
なお、アタックスグループのセミナーは有料になっており、メルマガ会員の場合安くなるなどの特典もありますので、詳しくはサイトより確認してみてください。
なお、事業承継セミナーについてもっと詳しくは調べたい方はセミナー記事を参照にしてみてください。
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まとめ
今回は事業承継の問題とその解決策について書きましたが、参考になりましたでしょうか。
事業承継を初めてやることで、色々と問題などを抱えやすいのですが、一人で抱え込むのではなく、セミナーにて情報収集したり、専門家に相談するなり、ご自身にとって一番ベストな承継方法を見つけるようにしましょう。
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