2019年上期(1月-6月)の住宅・不動産業界のM&Aは17件となり、10年ぶりの高水準となった。08年以降では、08年(18件)、09年(同)に次ぐ件数だった。金額は約299億円で08年以降では5番目だった。トヨタ自動車とパナソニックがそれぞれ傘下の住宅事業を2020年1月に統合することを決めるなど、異業種による不動産関連事業の大きな動きもあった。住宅・不動産業界の競争激化や少子・高齢化による市場縮小を見込んだ企業の選択と集中などが背景にある。
東京証券取引所の適時開示情報を基に、経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計した。
1、金額トップはリログループの約230億円
上期のM&Aで取引金額が最も高かったのは社宅管理や福利厚生運営代行などを手がけるリログループが、カナダのリロケーション(転勤者の留守宅を賃貸する業務)大手のBrookfield RPS Limited を約230億円で完全子会社化する案件。
Brookfieldは世界8カ国14カ所に拠点を持ち、海外赴任に伴う移転・引っ越しや留守宅管理などをグローバルに展開している。リログループは同社を傘下に取り込むことで、北米はもとより、欧州、アジアでのサービス体制を確立し、日本企業の世界展開を後押しする。
不動産の自己勘定投資などを手がけるファーストブラザーズが約26億円で青森地盤の東日本不動産(青森県弘前市)を完全子会社化する案件も取引金額が大きかった。
東日本不動産は事務所ビルや商業施設などを所有・運営しており、ファーストブラザーズは同社を取り込むことで、東北エリアでの事業拡大につなげる。
金額の上位3番目は、不動産販売を手がけるFRACTALEが不動産子会社の池田不動産(東京都大田区)を約17億円で大阪木材相互市場(大阪市港区)に譲渡する案件。
池田不動産は保有不動産の売却に力を注いでいたが、大阪木材相互市場が早期取得に応じる意向を示したのに伴い、全株式の譲渡を決めた。
2、トヨタ自動車とパナソニックは共同出資の新会社
注目を集めたのが、5月に発表されたトヨタ自動車とパナソニックによる住宅事業の統合だ。両社は共同出資による新会社「プライムライフテクノロジーズ」(東京都)を設立し、この新会社の傘下にトヨタホーム(名古屋市)、ミサワホーム(東京都新宿区)、パナソニックホームズ(大阪府豊中市)を置く。3社合計の戸建住宅供給戸数は年間1万7000戸規模となり、国内住宅業界でトップクラスに立つ。両社住宅事業の統合により事業基盤を強化するとともに、両社の街づくり事業の強みを活用した成長を目指す。
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