会社、企業を買いたいあなたへ!会社買収で成功するために知っておくべき全知識
- 人材の採用・育成が大変だから、優秀な人材を抱えている会社を買いたい
- 新規事業の開発をしたいから、その事業に特化している会社を買いたい
- オーナーとして不労所得を得たいから、会社を買いたい
- エリアを拡大したいから、そのエリアの地場の営業力の強い会社を買いたい
など、近年ゼロから会社や事業を作り上げるより、既にある会社の人材、技術、営業力、取引先を活用したM&A、会社の買収が進んでいます。
しかし、会社を買うことによって、今の会社の地方エリアへの進出が成功した、新しい商品の開発ができたなど成功する買収事例もあれば、期待していた効果が得られなかった、営業利益が下がったなど失敗する買収事例もたくさんあります。
そこで今回は、会社の買収で成功するために知っておくべき知識をまとめました。これから会社、企業の買収を検討されている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1、失敗しない会社の買収で最も重要なことは?
まず最初に、失敗しない会社の買収で最も重要なポイントをお伝えします。
それは「会社を買収する目的を明確にし、その目的を達成させる戦略もきちんと立てている」ことです。
売上が好調な会社は、自分から会社を買う予定がなくても、銀行、M&A仲介会社などから会社買収の話を持ちかけられるケースもあります。中には、特に戦略もなく、担当者にススメられたからという受け身の状態で会社を買収したり、同業他社に超えられそうからという焦りの状態など、
- 本当に会社を買う必要があるのか
- 買ったあとの戦略はあるのか
など、あまり考えずに買収したケースもあります。
その場合買収したものの、業績が伸びなかった、期待していた技術力や販売力がなかった、赤字経営が続いてしまったなど、経営上でたくさんの問題が抱えて、結果、買収は失敗で終わってしまったケースがほとんどです。
会社を買収するには、お金も時間、労力もかかるわけですから、本当にその会社を買収する必要があるのか、どのように活用したいかなどきちんと検討してから、買うようにしましょう。
2、会社を買う4つのメリット
では、会社を買うにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下にて順番に書いていきます。
(1)シナジー効果を最大化に得られる
会社を買うことによって、今の会社との相乗効果を最大化に得られることが、会社を買う最も大きなメリットとして挙げられます。
例えば、営業力の強い会社を買うことによって、売上アップのシナジー効果に繋がります。技術力が強い会社を買うことによって、新しい商品の開発ができたという開発力アップのシナジー効果に繋がります。
(2)会社の成長スピードが早くなる
一から新しい会社を作る、事業を立ち上げる必要がなく、買収する会社にある人材、営業力、技術力、クライアントを活用することによって、会社の成長スピードが一気に早くなることもメリットとして挙げられます。
(3)起業リスクの回避ができる
ゼロから会社を作るには、設立手続きから始め、事業計画作成、クライアント開拓など、会社の運営を軌道に乗せるには、労力も時間もお金もかかります。
しかし、既に運転中の会社は、元ある基盤からスタートすることができ、先の見通しが立てやすくなります。
(4)オーナーとして不労所得を得ることができる
実際の経営はせず、オーナーとして出資のみすれば、会社が利益出ればその分不労所得を得ることができます。
なお、赤字になれば損をすることもありますので、買収する会社をきちんと見極めることが大切と言えます。
3、会社を買う3つのデメリットと回避策
一方、会社を買うにはリスクも伴います。
(1)簿外債務や必要のない資産を買ってしまうリスクがある
多くの会社は、決算書に記載されていない簿外債務、例えば将来に支払う退職金だったり、リースだったりなどの債務を抱えています。また、事業と関係の無い資産や、価値が落ちている資産を保有していることもあります。
公認会計士による会計監査が行われている会社では、そのような簿外債務や資産の評価額は細かく調査され、財務諸表に記載されるのですが、
- 当初回収見込みの債権は、実は回収できなかった
- 訴訟のリスクを抱えていた
など、会社を買収したあとに初めて分かったケースもあります。
そうならないためには、売手会社が出したデータを参考にすることは大切ですが、気になるリスクについても徹底的に洗い出す事が重要です。
(2)運転資金が不足する場合がある
一般的には会社の買収資金として、金融機関から融資を受けるケースが多いです。買収した会社の事業が安定しており、安定的に資金を獲得できる場合は良いのですが、売掛金の回収が遅れたり、当初の予定より資金がかかってしまい、運転資金が不足するという場合に陥るリスクも考えられます。
期日通りに融資への返済ができないと、会社の信用度に大きく関わることなので、事前にこのような予期せぬ出費も認識することが非常に重要です。不安な方は、公認会計士などのプロに相談されるといいでしょう。
(3)うまく引き継ぎができないリスク
一般的には、売手会社は最終契約が完了したあとに、社員、取引先、銀行などに会社を売却したことを開示しますので、つまり、その時にみなさん初めて会社が売られたことを知らされます。
中には、会社が売却されたことを知って、社員が辞めたり、クライアント離れしたりなど、期待していた売上の増加どころか、一気に売上が下がって赤字に陥るケースもあります。
そうならないには、買収したあとに考えるのではなく、トップ面談が終わり、買収の具体的な条件調整に入ったときから、買収後の引き継ぎで起こりうるリスクの洗い出し、どのようにスムーズに会社を引き継ぐか、営業方針などを売手会社の経営者と調整することが大切です。
4、会社を買う方法
買収で成功するには、自分の会社の需要に合せて最適な買う方法を選ぶことも大切です。
大きく以下6つの方法が挙げられます。
- 売手会社の株式を買う「株式取得」
- 売手会社の全部の株式を取得する「株式交換」
- 新しく会社を立ち上げて、売手会社の株式を全部移転させる「株式移転」
- 売手会社の1つの事業、もしくは全部の事業を買う「事業譲渡」
- 売手会社から分割された事業を買う「会社分割」
- 売手会社と事業を統合し一つの会社になる「合併」
それぞれの方法について詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
5、会社を買うための資金調達方法
会社にキャッシュがあればいいのですが、ほとんどの会社は買収資金を調達することになるでしょう。
M&Aにおいて、大きく2つの資金調達方法があります。
以下にて説明していきます。
(1)買手会社を担保に借りる「 コーポレートファイナンス」
1つ目は、買手会社を担保に借りる「 コーポレートファイナンス」です。
要は自分の会社の価値を最大化にするため、会社を買うことに資金調達を行うことです。M&Aの資金調達で最も多く使われている方法です。
なお、コーポレートファイナンスの中で2つのローンがあります。
①シニアローン
シニアローンという名前がついていますが、簡単に言えば通常の貸付ローンというイメージを持って頂ければと思います。
銀行の評価によって異なりますが、一般的には低い金利で有利な条件で借りることができます。
なお、シニアローンは優先返済権がついており、万が一途中で返済ができなくなった場合、今の会社の資産を担保として取られてしまうリスクがつきます。
②メザニンローン
メザニンローンは、金利が高く設定されていて、いい条件のローンではないこともあり、劣後ローンとも呼ばれます。
一般的には、シニアローンを優先的に利用し、それでも資金が足りない場合にメザニンローンを利用するケースがほとんどです。
なお、メザニンローンは優先返済権がつかないローンになります。
(2)売手会社の資産(LBO)などを担保にする「 ノンリコースファイナンス」
ノンリコースファイナンスは、売手会社の資産、売上などを担保にした資金調達方法です。
この場合は、売手会社の信用度がメインになるため、自己資金が少なくても買収することできるというメリットがある反面、売手会社の売上が下がって返済不能に陥るリスクがあります。
一般的には、買収のために新しく会社を作る、投資ファンドによる買収で使われることが多いです。
M&Aの銀行活用について詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
6、会社を買うための10のステップ
最後に、実際に会社を買うときのステップをご紹介します。
(1)M&Aのプロに相談する
会社を買うと検討し始めたら、まずはM&Aのプロに相談してみるといいでしょう。
M&Aのプロとしては
- 銀行
- 公認会計士
- 弁護士
- 司法書士
- 仲介会社
など、金融機関から士業まで相談できる窓口は様々ですが、中小企業の場合最後の成約までのトータルコンサルティングを行うのは、ほとんど仲介会社になりますので、知り合いの士業の先生に相談して仲介会社を紹介してもらったり、最初から実績が豊富な仲介会社に相談するのもいいでしょう。
次のステップからは、M&Aの仲介会社に依頼した場合の流れを書いていきます。
(2)NDA(機密保持契約書)を締結する
具体的に売手会社の紹介をされる前に、NDA(機密保持契約書)の締結を行われます。
売手会社の情報公開は、その会社の存続だけではなく、コンプライアンスやインサイダー取引などの問題にもなる可能性が非常に大きいため、それを回避するためのNDA(機密保持契約書)になります。
買手会社も、スムーズに買収を進めるにあたって、下記注意を意識しておきましょう。
- 関係者を限定する
- 問い合わせ先を注意する
- 情報の管理方法を注意する
など。
(3)「提携仲介契約書」を締結する
NDA(機密保持契約書)を締結後、仲介会社から売手会社の提案をしてもらえます。
その中で、具体的に交渉したい会社がありましたら、交渉していいという意思表示として「提携仲介契約書」を締結します。
(4)売手会社の詳細資料を検討する
「提携仲介契約書」を締結したら、いよいよ具体的に買収する会社の検討に入ります。
売手会社の下記資料より検討することができます。
- 企業概要書
- 過去3期分の決算書・税務申告書類
- 直近の残高試算表
- 退職金など簿外債務を整理する
- 会社所有不動産があった場合、その不動産に関連する書類
(5)「トップ面談」を行う
資料の検討で買いたい会社がありましたら、その次は売手会社の経営者と「トップ面談」を行います。
トップ面談では、謙虚な姿勢を見せることが重要です。なぜならば、本当にいい売手会社であれば、他の会社も同じく狙っているからです。
トップ面談で成功するには、以下のポイントをおさえておきましょう。
- 謙虚な姿勢を見せる
- 売手会社に失礼のないよう、事前に事業内容を把握する
- 質問攻めにしない
なお、トップ面談では、仲介会社の担当の進行で大きく以下の流れで行います。
- ①買手の社長より、会社の概要説明、買収の希望、買収後どのような会社にしたいなどの挨拶をする
- ②売手の社長より、会社の歴史、アピールポイント、会社を売る理由など挨拶をする
- ③質疑応答
- ④現地視察の場合はその日程調整
- ⑤今後のスケジュールの確認など
現地調査する場合、後日行われます。
(6)買収条件などの条件調整をする
トップ面談で売手会社からも前向きに検討する返事を頂きましたら、成約を前提に、担当者により細かい条件調整に入ります。
その際に、売手会社に対して大きく以下のような内容を検討していきます。
- 株式譲渡、事業譲渡などの買収方法
- 財務内容
- ビジネスモデル
- 技術力
- 営業力
- 現在の経営者の処遇
- 役員・社員の引き継ぎ条件
- 契約時期
- 最終的に投資可能な金額、追加投資額
など。
(7)「基本合意契約」を締結する
売手会社と条件調整が整いましたら、「基本合意契約」を締結します。ここからは自社の独占交渉権の権利が発生し、基本的には1:1の交渉になります。
基本合意契約には、以下のような内容が記載されています。
- 譲渡金額など大まかな条件
- 契約予定日
- 独占交渉権
- 基本合意契約の有効期限
- 法的に拘束される範囲
- 買取監査に関する内容
など。
なお、買収する会社が上場会社の場合、このタイミングで証券取引所に開示する場合もあります。
(8)買取監査(デューデリジェンス)
基本合意契約を締結したあと、最後の山場と言われる監査法人による「買取監査」に入ります。
買取監査では、下記3つの分野で監査を行います。
①財務監査
財務監査では、公認会計士がメインに行われます。売手会社の財務状況を精査します。
- 直近3期の決算書
- 直近3期の税務申告書
- クライアントとの契約書
- 借入れの契約書
- 資産の評価
- 簿外債務の精査
- 株主総会議事録
など、財務の実態をチェックします。
②法務監査
法務監査では、弁護士がメインに行われます。
- 現在の債権債務状況の確認
- 労務問題
- 退職金など将来発生するかもしれない債務債権
- 訴訟記録
など、法律上のリスクをチェックします。
③ビジネス監査
ビジネス監査では、仲介会社の担当者をメインに行われます。
- 買収によって得られる利益
- シナジー上の効果
などをチェックします。
上記3つの監査の結果を持って、以下の観点から総合鑑定します。
- 売手会社の現在の組織のままで、事業計画通りの数字達成できるのか?
- 今後の経営の課題点とは何か?
- 期待していた重要業績評価指数(KPI)は達成できるのか?
- 同業他社に勝てる強みはなにか?改善すべき弱みとは何か?
総合鑑定の結果に基づき、役員の交代交渉、買収価格の調整などを行う場合もあります。
ここで注意して頂きたいのは、売手会社の経営者にそのまま継続して経営してもらう場合、M&Aの前提となる事業計画やインセンティブを明確することが重要です。
なぜならば、今まで自分の会社だった現経営者は、会社を売却後は雇われ社長になりますので、つまり、モチベーションの違いがでてくることによって、売上に影響が出るリスクが考えられるからです。
とは言え、実際に会社を売る最終段階となり、会社を売ることに対して寂しく感じ、マリッジブルーになる経営者も多くいます。交渉する際に、売手会社の経営者の立場に立って、慎重に進めることが大切と言えます。
(9)最終契約
買取監査が無事終わり、晴れて最終契約を迎えることになります。
最終契約では、契約書の調印と同時に、法律に定められた一定のプロセスを踏む必要があります。
最も多い株式譲渡のクロージングの流れを1例として紹介します。
- ①売手会社の代表にて、取締役会に事前に株式譲渡の申請をし、取締役会がそれを承認し、「譲渡承認書」を交付する
- ②「株式譲渡契約書」を締結する
- ③買手会社が譲渡代金を渡す
- ④売手会社から社印、通帳などの貴重品を受取る
- ⑤買手会社にて取締役会に株券と名義書換申請書を提出する
- ⑥新しい株主名簿を作成する
- ⑦臨時株主総会を招集する
- ⑧臨時株主総会で新しい役員の選出をする
- ⑨取締役会を招集し、新しい代表取締役を専任してから、代表印などの登記を行う
(10)社員や取引先、銀行への開示
クロージングが終わりましたら、売手会社と前経営者と一緒に社員や取引先、銀行への開示を行います。
プレスリリースなどにより開示するのもこのタイミングで行われます。
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まとめ
今回は、会社、起業を買いたい時に知っておくべき知識について書きましたが、参考になりましたでしょうか。
会社、起業を買って、成功した会社もあれば、失敗した会社もあります。 失敗しないためには、会社を買うときのメリット、リスクをきちんと把握し、なんで会社を買うのか、買う目標はなにか、その目標を達成させる戦略を立てているのかなど、会社の買収を慎重に検討するようにしましょう。
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