経営者が100%の持ち株を持つ会社もいれば、複数の株主がいて持ち株が分散されている会社もあります。M&Aを活用した会社の売却、事業承継などを検討される場合、所有している株式の比率は、会社の支配権があるかどうかは大きく変わってきます。
また、支配権プレミアムと言って、支配ができる持ち株を取得する際に、支配権プレミアムは大きな影響力を持つことによって、売却価格に上乗せもしてくれます。
つまり、会社を支配できる持ち株を持っているかどうかはM&A、事業承継の成敗を左右するほど、非常に重要なことです。そこで今回は、M&A、事業承継がスムーズに進められるよう、支配権の仕組みについて書いていきます。これから会社のM&A、事業承継を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1、そもそも支配権とは?
株式会社の支配権とは、実質会社を直接に支配できる権利のことを言います。
持ち株が多ければ多いほど、会社を支配できる権利があるということになります。
では、実際に持ち株の比率によって、どんなような権利があるのか、以下にて詳しく見てみましょう。
2、持ち株比率別!支配権の内容について
(1)持ち株比率が「1割」以下の場合
一般的には、持ち株比率は1割以下でも、支配できる権利は少ないですが支配権は認められます。
例えば、3%以上の持ち株があれば、「会計帳簿閲覧権」がありますので、
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
などを閲覧することができます。
(2)持ち株比率が「5割」以上の場合
出席した株主の半分以上同意が必要なのは普通議決です。
ここで5割以上の持ち株を持っていれば、株主の同意がなくても、1人でも決定することができます。
持ち株比率が「5割」以上所有する場合、経営上の判断もできる権限を有しますので、「経営権」とも言います。
普通議決では大きく以下のような議決事項が挙げられます。
- 役員の選任
- 役員の報酬
- 譲渡制限株式の承認
など。
(3)持ち株比率が「2/3」以上の場合
出席した株主の2/3以上同意が必要なのは特別議決です。
持ち株比率が「2/3」以上所有する場合、株主総会の特別議決は自分の一存で決めることができます。
特別議決では大きく以下のような議決事項が挙げられます。
- 定款の変更
- 役員の解任
- 特定の株主から株式の取得
- 合併、株式交換、株式移転
など。
会社の根幹的な議決全て1人で決めることができることから、ほぼ会社の「支配権」を握っていると言ってもいいでしょう。
(4)持ち株比率が「3/4」以上の場合
持ち株比率が「2/3」以上所有していれば、ほぼ会社の「支配権」を握っているとはいえ、まだ完全となる支配権とは言えません。
持ち株比率が「3/4」以上、もしくは100%じゃないと議決できない下記項目があります。
- 持ち株比率が「3/4」以上で議決できる「特別支配株主の株式を取り扱う定款変更」
- 株主全員の同意が必要とする「取得条項の設定・変更をする定款変更」
などがあります。
(5)M&A、事業承継する時の持ち株比率は「9割」以上が望ましい?
「持ち株比率が2/3以上あれば大丈夫でしょう!」と思われている方も多いですが、実際にスムーズにM&Aによる会社売却、事業承継をする時の持ち株比率は「9割」以上が望ましいです。
なぜならば、9割以上持ち株を持っていれば、万が一会社の売却で異義を持つ少数株主がいたとしても、特別支配株主の株式を強制的に取得できる権利を行使でき、株を取得することができるからです。
3、事業承継における支配権について
事業承継によって会社を引き継ぐ時は、スムーズに引き継いで運営していくには、十分な支配権を所有する必要があります。
一般的には、2/3以上の株式を所有していれば経営権がありますが、可能な限り多く保有する、100%と完全所有することが望ましいです。
なお、株式が分散して事業承継に支障が出る場合、下記対処法を参考にしてみてください。
(1)株主から株式を買い集める方法
スムーズに事業承継ができる株式を所有していない場合、分散していた株式を株主から買い集める方法があります。
しかし、株価が高い、会社の売上が好調な場合、売却を断る株主もいることを認識しましょう。
また、株主から株を買い集めるとなると、十分な資金も準備する必要があります。
(2)遺留分減殺請求用に「無議決権株式」を発行する方法
遺留分とは、法定相続人の権利を保障することを言います。
例えば、遺言書で会社を後継者に全て相続させると書いても、他の法定相続人はこれに従わない場合も考えられます。そうすると、相続を受けていない法定相続人は遺留分減殺請求をすれば、株の分散に繋がるリスクが出てきます。
遺留分減殺請求の対処方法としては、「無議決権株式」を発行する方法があります。分かりやすく言うと、株の価値はありますが、議決権はない株式のことです。そうすることによって、遺留分減殺請求をした法定相続人にきちんと株式が渡り、会社の経営には支障が出なくて済みます。
(3)相続人から株式を買い集める方法
遺言書がないなどの理由によって、株式が相続人に分散してしまった場合、相続人から買い集める方法があります。
この場合も、株式を買い集める資金の用意が必要あるのと、相続人のうちに売却を断る人がいた場合、別の方法を考える必要があります。
(4)拒否権ありの株式(黄金株)を後継者に保有させる方法
黄金株とは、会社の買収、合併など重要な議案の否決権を持つ株式です。こちらの株を発行して後継者に保有させることによって、後継者はほぼ確実に支配権を所有することができます。
親族内承継のメリット、注意点、成功させるポイントなどについて詳しくは親族内承継の記事を参照にしてみてください。
4、支配権プレミアムとは?
M&Aの売却価格は、会社の評価価格に対して、将来見込まれる利益として「営業権」などを加味して売却価格に上乗せされます。
会社の経営を支配することができる株式の取得に対して、支配権プレミアムと言って、この支配権に対して一定の価格が支払われます。コントロールプレミアムとも呼びます。
つまり、会社を支配できる株式を持つことで、高く会社を売却することができるとも言えます。
なお、M&Aでの会社の評価価格の算出方法について詳しくは下記記事をしてみてください。
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まとめ
今回は株式会社の支配権について書きましたが、参考になりましたでしょうか。
持ち株の比率によって、議決できる項目が異なります。将来的にM&Aを検討している方、事業承継の事前準備を検討している方、きちんと自分の持ち株の権限について把握し、会社を支配できる株式として足りない場合、余裕持って株式の買い集めなど対策を立てましょう。
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