M&Aによって株価どう変わる?最も影響受けやすい3つの手法とは?

M&A仲介サービス大手のストライクが上場企業の適時開示をもとに集計したデータによると、2019年1月〜6月の上期のM&Aの成約件数は394件と、昨年2018年の上半期と比較して67件も上回った数字となりました。

M&Aの取引が積極的に進めていく中で、株価に対する影響を気にされている方も多いのではないでしょうか。売手会社にしても、買手会社にしてもM&Aを実施することによって株価に影響を出ると考えられます。更に、M&Aの手法によっても及ぼす影響が異なると言えます。

そこで今回の記事では、M&A実施により株価への影響について書いていきます。M&Aによる株価の動きについて知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

1、M&Aの成約件数が増えている!その背景は?

冒頭にも書きましたが、2019年1月〜6月の上期のM&Aの成約件数は、昨年の同時期を上回りました。

その背景には、少子高齢化の影響を受け国内市場の縮小、サービス業を中心とする人手不足、シェア拡大や労働力確保のため、海外事業展開の手段としてM&Aを活用されている動きが広がっています。

下半期に向けて消費税の増税、アメリカ、中国との貿易摩擦など影響を与える懸念材料が多くありますが、2019年は暦年で最も多い成約件数が出るのではいかと期待できるという見解も出ています。

2019年上半期の業種別のM&A件数について詳しくは知りたい方は下記記事を参照にしてみてください。

2、M&Aによる株価はどうなる?

では、実際にM&Aを実施することによって、株価にはどのような影響が出るのでしょうか。

以下にて売手会社と買手会社別に、それぞれの株価の動きをみてみましょう。

(1)売手会社の株価の動き

一般的には売手会社は

  • 会社をさらなる拡大
  • 成長スピードを加速する

など、会社をプラスになる目的でM&Aを実施することがほとんどなので、投資家からすると会社はこれからもっと大きくなる、収益がもっと上がるという期待値が高まるので、株価は上昇するケースが多いです。

なお、会社を売却する時の流れ、税金など詳しい内容について知りたい方は「会社をうる」を参照にしてみてください。

(2)買手会社の株価の動き

一方、買手会社は

  • 新規事業の開拓
  • 技術力の確保
  • 人材の確保

など、売手会社の強みを活かし、自社とのシナジー効果を最大化に発揮する目的で買収することが多いことから、同じく投資家からプラスに評価され期待される場合は株価が上昇します。

しかし、実際に会社を買収したあとに、人材流失、経営陣配置がミスしたなどM&Aを実施した後の組織再編(PMI)がうまくいかず、想定していたシナジー効果を得られなかった、業績が悪くなった場合は、株価が下落することになります。

つまり、M&Aを実施することによって、買手会社の株価は上昇する場合もあれば下落する場合もあると言えます。

なお、会社の買収について詳しくは下記記事を参照にしてみてください。

3、M&A手法による株価の動きが変わる?

M&Aと言っても、一概に会社を売買するだけではなく、大きく6つの手法もあります。

そのうち株価に大きく影響が出る下記3つの手法についてピックアップしました。

(1)株式移転

株式移転とは、金銭の取引はなく、親会社となる新しい会社を立ち上げて、その新しい親会社に株式を移転することによって、完全子会社になる組織再編手法です。

たとえば、複数の上場会社が株式移転をして、新しく親会社を立ち上げることによって、今まで別々の会社が経営統合し一つの会社になり、それぞれの強みを活かすことによって業績が上がる可能性が高くなり、株価の上昇にも繋がります

なお、株式移転について詳しくは知りたい方は下記記事を参照にしてみてください。

(2)株式交換

株式交換とは、完全親会社となる会社が、完全子会社となる会社が発行済みの株式を全て取得する手法です。株式交換実施することによって、親会社と子会社は100%の完全支配関係になります

株式交換するには、買手会社と売手会社の株価を基準に、株式交換比率にて算出します。株式交換比率は一般的には買手会社(親会社)と売手会社(完全子会社)が交渉して決めることになります。

なお、株式交換の場合、売手会社(子会社)は買手会社(親会社)の株を持つことになるので、上昇するケースが多いです。一方、買手会社(親会社)は買収のために新しく株式を発行して、自社より株価が低い売手会社(子会社)の株式と交換することによって、株価が下がる可能性があります

株式交換について詳しくは株式交換の記事を参照にしてみてください。

(3)TOB(株式公開買い付け)

TOBとは、Take-Over Bidの略で、証券取引所を通さずに

  • 公開買い付けする期間
  • 公開買い付けする価格
  • 公開買い付けする株式数

などを公告して、買収する相手会社の株式を所有している株主向けに買付けすることです。

不特定多数の株式に対して買付けすることができることから、効率よく株式を集めることができ、売手買手問わず価格のズレがありません。

なお、TOBは本来の目的に至らず余計な株式を抱えなくてもいいように、買付けする株式数の下限を設けることができます。

①友好的TOB

一般的には株主に株を売ってもらうためには、TOBを発表する株価はプレミアムをプラスした価格となりますので、売手会社の株価は上昇すると言えるでしょう。

一方、買手会社も会社を買収することによって、自社イメージの向上、信頼度の向上など会社価値が高くなるのであれば、投資家からの購入が増え株価の上昇が見込めます

②敵対的TOB

経営陣の同意を得ずにTOBを行い、敵対的買収(敵対的TOB)を行われるケースもあります。

日本経済新聞の発表によると、2018年の敵対的買収件数は26件もあり、なんと1999年の42件の次に多い件数となったようです。

敵対的TOBの場合、相手会社の経営権の取得を目的にするケースがほとんどなので、株価も高く設定されて売手会社の株価が上昇します。

しかし、敵対的TOBの買収防衛策の一つとして「ポイズンピル」といって、あらかじめ定められていた新株を発行することができ、既存株主は新株予約権で既に発行されていた新株を時価よりも安い価格で取得できます。その施策を実施されることによって、一時的に上昇した株価が下がることになります。

なお、買手会社は高い株価を設定することによって、買収価格が上昇しやすく、巨額な資産減損になるリスクがありますので、注意する必要があると言えるでしょう。

敵対的買収について詳しくは下記記事を参照にしてみてください。

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まとめ

今回はM&Aにより株価の与える影響について書きましたが、参考になりましたでしょうか。

M&Aを実施することによって、売手会社も買手会社の株価とも影響を受けることになりますが、その中でも最も影響を受けやすい3つのM&Aの手法について把握しておきましょう。

八木チエ

八木チエM&A INFO プロデューサー

投稿者プロフィール

大学卒業後、7年間IT会社の営業を経験し、弁護士事務所に転職。
弁護士事務所で培った不動産投資の知識を活かし、業界初の不動産投資に特化したメディアを立ち上げ。2018年に株式会社エワルエージェントを設立。不動産投資「Estate Luv」、保険「Insurance Luv」などのメディア運営やメディアのコンサル事業に特化。
M&A業界が盛んになった今、M&Aの情報を正しく伝えたい、もっと多くの人にM&Aの魅力を知ってもらいたいと思い、M&Aに特化したメディア「M&A INFO」を立ち上げ。より有益な情報を多く配信している。

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