敵対的買収とは?敵対的買収されやすい会社の3つの特徴と6つの防衛策

敵対的買収」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。2005年にフジテレビがライブドアに買収を仕掛けられた、敵対的買収は有名な話と言えるでしょう。

一般的には、敵対的買収は上場企業が対象となりますので、中小企業において譲渡制限を設けている会社が多く、敵対的買収になるケースはほとんどないと言われています。

今回は、敵対的買収されやすい会社の特徴、敵対的買収の対策について書いていきます。ぜひ最後まで読んでみてください。

1、そもそも敵対的買収とは?

敵対的買収とは、買収対象会社の取締役会の同意を得ずに、買収を仕掛けるM&Aの戦略手法の一つです。

買収対象会社の株式を買い集めして、また株式公開買付け(TOB)を実施して株式を買付けすることにより、買収対象会社の経営権を取得することです。公開買付けを行うので、「敵対的買収TOB」とも言います。

敵対的という言葉がつくから一見悪いイメージがありますが、買収するからその会社を悪くするというわけではないため、買収対象会社の株主、社員、クライアントとは友好的です。

2、敵対的買収のターゲットになりやすい会社の3つの特徴

とは言え、敵対的買収はどの会社にでも実施するわけではありません。敵対的買収されやすい会社の特徴をみてみましょう。

(1)技術力が高い会社

特定の技術力が高い会社は敵対的買収の対象にされやすいと言われています。

なぜならば、自社で特定の免許を取得したり、スキルが高い優秀な人材を採用するよりも、既に実績のある会社を敵対的買収した方が、自社の規模拡大などのシナジー効果を最大化に得ることができるからです。

(2)株主の構成が不安定な会社

株主の構成が不安定な会社も、敵対的買収の対象にされやすいと言われています。

なぜならば、利益を求める投資家が多く株主となっている会社は、株主は基本利益を優先するので、敵対的買収により自分の利益が大きいと判断した際に、経営陣の変更を望む可能性が高くなるからです。

一方、中小企業の場合は基本経営者が大半の株式を所有しているため、株主構成が安定していると言えます。

(3)株価が低い会社

純資産に対して株価が低い会社は、買収したあとに利益が大きく得ることができることから、敵対的買収のターゲットになりやすいと言われています。

上記以外には、

  • 独自の売却販路を持っている会社
  • 経営状況が不安定になりやすい会社

などの会社も敵対的買収の対象として狙われやすいようです。

3、買収防衛策されたら?その6つの対策

では、万が一敵対的買収の対象になったらどうしたらいいでしょう?

以下にて6つの対応策について書いていきます。ぜひ参考にしてみてください。

(1)買収意欲を失わせる「クラウンジュエル」

クラウンジュエルは、買収対象となった会社は、自社の魅力的な技術、資産、事業を意図的に第三者に分散させることによって、敵対的買収の会社に買収意欲を失わせる防衛策の一つです。

わかりやすく言えば、敵対的買収してもメリット得られないという作戦です。

(2)元の株主に有利な新株を購入できる「ポイズンピル」

ポイズンピルは、あらかじめ既存株主向けに「新株予約権」を発行するという防衛策です。

敵対的買収により会社の株式の一定数が取得された場合、ポイズンピルにてあらかじめ定められていた新株を発行することができます。既存株主は新株予約権で既に発行されていた新株を時価よりも安い価格で取得できます。

そうすることによって、発行された株式数が増えることになり、敵対的買収会社が取得した株式数は全体に占める割合が低くなり、支配権を得にくくなり買収を食い止める対策です。

(3)マネジメントバイアウト(MBO)

マネジメントバイアウト(MBO)は、会社の経営陣が株主から株式を取得して、事業譲渡により事業を分割させて、オーナー経営者として独立させるやり方です。

マネジメントバイアウトは、株主に左右されずに経営を行いたいという意図で実施される場合も多くあります。

(4)取締役の退職金を高く設定する「ゴールデンパラシュート」

敵対的買収されると、現取締役を解任されるケースがほとんどです。ゴールデンパラシュート現取締役を解任することによって、多額の退職金を支払えるよう、事前に取締役の退職金を高く設定しているのです。

一般的には、ゴールデンパラシュートに設定されている取締役の退職金は、取締役の給料の3倍を一つの目安にしています。例えば年収1,500万円の取締役の場合、退職金は4,500万円になります。取締役二人でもいれば、退職金だけで9,000万円支払うことになります。

そうすることによって、敵対的買収会社は取締役の退職金で大金を支払うことになれば、会社の財務状況が大きく悪化することが予想されますので、敵対的買収を諦めるという防衛効果があると言えます。

(5)逆買収「パックマンディフェンス」

パックマンディフェンスは、敵対的買収を仕掛けてきた会社を、逆に敵対的買収をしかけることです。

今の日本は、敵対的買収を仕掛けられた会社が、敵対的買収を仕掛けた会社の1/4の株式を取得すれば、敵対的買収を仕掛けた会社は議決権がなくなります。

(6)株式公開買付の株価を高く設定する「ホワイトナイト」

敵対的買収は、株式公開買付け(TOB)を実施して株式を買付けすることにより、会社を買収するのですが、ホワイトナイトは、買収対象となった会社が自社と友好的な第三者の会社に高い株価で株式公開買付け(TOB)を実施してもらい、敵対的買収を対抗する策です。

ホワイトナイトは防衛策というより、対抗策になります。

(7)株主との関係が最も重要?

敵対的買収されないように、対策の導入を検討されている会社が増えているものの、実は株主の反対により、対策が立てられない会社も少なくありません。

なぜならば、利益を重視する株主からすれば、より利益が増えるのであれば、経営陣が変わっても構わないからです。

つまり、敵対的買収の防衛策を立てるには、株主とよい関係を築き、同意をもらうことが非常に重要と言えるのです。

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まとめ

今回は敵対的買収について書きましたが、参考になりましたでしょうか。

中小企業にはあまりないとは言え、これからIPO(上場)を検討されている中小企業は、ぜひ今のうちから対策を立てておきましょう。

八木チエ

八木チエM&A INFO プロデューサー

投稿者プロフィール

大学卒業後、7年間IT会社の営業を経験し、弁護士事務所に転職。
弁護士事務所で培った不動産投資の知識を活かし、業界初の不動産投資に特化したメディアを立ち上げ。2018年に株式会社エワルエージェントを設立。不動産投資「Estate Luv」、保険「Insurance Luv」などのメディア運営やメディアのコンサル事業に特化。
M&A業界が盛んになった今、M&Aの情報を正しく伝えたい、もっと多くの人にM&Aの魅力を知ってもらいたいと思い、M&Aに特化したメディア「M&A INFO」を立ち上げ。より有益な情報を多く配信している。

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