完全子会社化するため、株式交換はM&Aの一つの手法として多く活用されています。株式交換をする場合、妥当な株価算定をするには、株式交換比率を決める必要があります。
では、株式交換比率はどのように決められるのでしょうか。
今回は、株式交換比率の決め方などについて書いていきます。ぜひ参考にしてみてください。
目次
1、株式交換比率とは?単元未満株式は?
(1)そもそも株式交換比率とは?
株式交換比率とは、言葉の通りに株式を交換する時の比率のことを言います。
M&Aの1つの手法として株式交換がありますが、株式譲渡を受ける買手会社の株式を、株式譲渡をする売手会社の株式と交換し、買手会社は親会社となり、売手会社は完全子会社になります。
例えば、買手会社(親会社)の1株に対して、売手会社(子会社)は2.5株で交換するという株式交換比率を定めることになります。
株式交換について詳しくは下記記事を参照にしてみてください。
(2)「単元未満株式」になった場合は?
株式交換比率によって、銘柄が決められた最低売買単位の株式数が満たない端数という「単元未満株式」が出ることがあります。
上記のように、買手会社(親会社)の1株に対して、売手会社(子会社)は2.5株で交換するという比率になった場合、20株を持っていたとしたら、交換することによって50株になります。
買手会社(親会社)の最低売買単位の株式数が20株だとしたら、残り10株は単元未満株式になります。単元未満株式を所有していても、株主総会での議決権をもらえないので、下記2つの方法にて対処する必要があります。
①売却する
単元未満株式は、下記2つの方法によって売却することができます。
- 買手会社(親会社)に買い取ってもらう
- 証券会社などにて売却する
②株式を買い増しする
買手会社(親会社)の最低売買単位の株式数に買い増しすることができます。
しかし、これには買手会社(親会社)は、買増制度を取っていることが前提条件になりますので、事前に確認するようにしましょう。
2、株式交換するときの交換比率は?
では、株式交換比率はどのように決められるのでしょうか。
一般的には、買手会社(親会社)と売手会社(子会社)と両社で交渉して決めることになります。
株式交換比率の交渉では、両社の
- 会社規模
- 株式価値
- 発行済み株式数
などで総合的に判断します。
その中で最も重要なのは「株式価値」の算出です。
なぜならば、株価をきちんと算出せずに交換比率を決めてしまうと、買手会社(親会社)もしくは売手会社(子会社)のどちらかが損失する可能性があるからです。
なお、株式交換比率や株式の交換自体に公平性の確認できない場合においては、両社とも「無効確認訴訟」を主張する権利があります。
3、株式交換の交換比率を計算する方法は?
株式交換比率を算定の基準となる株価は、下記3つの方法で算定することができます。
(1)インカムアプローチ
インカムアプローチは、今の会社のキャッシュフローに将来の収益性を加味して、有利子負債などのリスクを差し引くことで企業の価値を算出するアプローチ方法です。
代表的には下記2つの算出手法があります。
- DCF法
- 配当還元法
①インカムアプローチのメリット
インカムアプローチのメリットは、ビジネスの将来の収益性を加味して評価するところです。
②インカムアプローチのデメリット
一方、デメリットとしては、将来において予測できない要素が多いため、収益性の評価によって評価価格が大きく変わります。
(2)マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、売手会社で過去にあった株式の取引実績に基づいて評価を行うアプローチ方法です。
代表的には下記2つの算出手法があります。
- 類似企業比較法
- 類似取引比較法
①マーケットアプローチのメリット
マーケットアプローチのメリットは、既に第3者が出した評価を参考に算出しますので、中立性が高いと言えます。
②マーケットアプローチのデメリット
一方、デメリットとしては
- 株価の変動が大きいことから、参考にならない
- 参考できる実例がない
などが挙げられます。
(3)コストアプローチ
時価純資産価額法とは、会社の
- もし今売ったらいくらになるかという「資産」
から
- もし今支払ったいくらになるかという「負債」
を差し引いた「純資産」の時価相当額で会社の値段を算定する方法です。
代表的には下記2つの算出手法があります。
- 時価純資産法
- 簿価純資産法
①コストアプローチのメリット
コストアプローチは、現在の資産、負債から算出した「純資産」に重点をおいているため、時価で純資産を算出することができ、会社の価値を正確に算定することができます。
②コストアプローチのデメリット
デメリットとしては、時価ベースに重点おいているため、事業の将来性を見えにくいところです。
なお、それぞれの算定方法について詳しくは会社を売りたい時の記事を参照にしてみてください。
4、株式交換比率を決めるプロセス
では、株式交換比率を決めるにはどのようなプロセスでしょうか。
大きく下記の流れになります。
(1)第3者機関に株価を算定してもらう
買手会社(親会社)と売手会社(子会社)の両社とも公平に株式の価値を算定してもらうには、専門知識のある第三者機関に算定してもらいましょう。
算定方法は上記「3、株価を算定する3つの方法」より選びます。
(2)「算定書」もしくは「フェアネス・オピニオン」を取得する
第三者機関に算定したあとに、「算定書」もしくは「フェアネス・オピニオン」を必ず取得するようにしましょう。
なお、書類には下記内容が記載されていることも確認してください。
- ①算定方法
- ②第3者機関より算定してもらったこと
- ③親会社・子会社とも利益が出ていること
(3)両社にて交渉し、株式交換比率を決める
第三者機関の算定書を基に、両社にて交渉し、最終的に株式交換比率が決定します。
5、株式交換比率を決める時の注意点
最後に、株式交換比率を決める時の注意点を見てみましょう。
(1)「固定比率方式」と「変動費率方式」
株式交換比率には、
- 固定比率方式
- 変動費率方式
のうちの一つを選んで決めることになります。
①固定比率方式
固定比率方式は、買手会社(親会社)を基準にします。買手会社(親会社)の株価を1として、それに売手会社(子会社)の株価を割った数値で比率を設定します。
②変動費率方式
変動費率方式は、売手会社(子会社)の株価を先に決めて、実行直前になって、買手会社(親会社)の株価を決める方式です。
それぞれの方法にメリットとデメリットがありますので、ご自身の会社に合った方法を選んでください。
(2)株主の反対
株式交換して、株価が変動することによって既存株主に大きく影響が出ます。
実際に株式交換を実施するにあたって、全決議権がある株主が半分出席した上で、2/3の賛成を得る特別決議にて実行に対する採決を行います。
そこで反対する株主が出た場合、反対する株主が所有している株式を買い取らないといけないため、資金を用意する必要があります。
6、株式交換公開後の株価に注意
上場企業の場合、株式交換公開後の株価に影響が出ます。投資家の期待が高ければ、株価上がりますし、期待が低い場合、株価が下がります。
なお、一般的には買手会社(親会社)の時価総額が大きいケースが多いため、親会社とのシナジー効果が期待され、買手会社(親会社)と共に、売手会社(子会社)の株価は上昇傾向になるケースが多いです。
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まとめ
今回は株式交換比率について書きましたが、参考になりましたでしょうか。
買手会社(親会社)と売手会社(子会社)の両社とも公平性のある株主交換にするには、株式交換比率が非常に重要な基準になります。きちんと評価方法について理解し、ご自身の会社が損をしないようにしましょう。
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